サッカークラブの決算の見方 — 来年が分かる5つの数字

〜決算書で見るべきは、たった5つの数字〜5つ

サッカークラブの決算の見方。クラブの決算書は数十ページありますが、見るべき数字は5つです。収入、給与、償却費、売却益、税引前損益。この5つの関係だけで、来夏そのクラブが買う側か売る側かが読めます。

サッカー財務読み方

ここまで16本にわたって、移籍金の償却、PSR、SCR、放映権、給与と書いてきました。

この記事は、それらを1枚にまとめるためのものです。クラブの決算が発表されたとき、どこを見れば何が分かるのか。5つの数字に絞ります。

見るべき5つ

1. 収入(Revenue)

すべての出発点です。SCRの分母になります。

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

中身は4つ。放映権、商業(スポンサー)、試合日、選手売却益。このうち放映権が最大で、順位と欧州大会出場で決まります。

見るポイントは、前年から増えたか。そして増えた理由です。CL出場による一時的な増加なのか、スポンサー契約の更新による構造的な増加なのか。前者は翌年消えます。

2. 給与(Wages)

最大の費用です。プレミアリーグ全体では£4.4bn、収入に対する比率は平均65%

見るポイントは、給与÷収入。65%が平均、70%を超えると危険水域と言われます。この比率が高いクラブは、SCRの85%に対する余裕がほとんどありません。

3. 選手の償却費(Amortisation)

過去の移籍金が、今年の費用として姿を現したものです。

見るポイントは、前年からの増減。増えていれば、去年たくさん買ったということ。そしてこの費用は、選手を売らない限り消えません。チェルシーの例では、£190m→£212mと1年で£22m増えていました。

4. 選手の売却益(Profit on player sales)

ここが最も重要かもしれません。

多くのクラブは、この売却益がなければ赤字です。逆に言えば、売却益で黒字を作っているクラブは、来年も同じことをしなければなりません

見るポイントは、売却益を除いた損益(営業損益)。ここが赤字なら、そのクラブは毎年選手を売り続ける必要があります。

5. 税引前損益(Pre-tax profit/loss)

最終的な数字です。2024/25シーズンのプレミアリーグ20クラブ合計は、£948mの赤字でした(前年は£135m)。

ただし、この数字だけを見ても意味が薄いことは、ここまでの4つで分かるはずです。大きな赤字でも、それがスタジアム建設の減価償却なら、PSRでは差し引かれます。

5つをつなげて読む

具体的な読み方を、順番に示します。

手順1:給与÷収入を計算する
70%を超えていたら、そのクラブは今夏、売る側です。

手順2:売却益を損益から引く
引いた結果が大きな赤字なら、構造的に赤字のクラブです。毎年、誰かを売らなければなりません。

手順3:償却費の増減を見る
増えているなら、過去の補強のツケがこれから数年続きます。減っているなら、古い契約が終わりつつあります。

手順4:収入の増加要因を確認する
CL出場やカップ戦の勝ち上がりによる一時的な増加は、翌年消えます。それを前提に給与を上げていたら危険です。

手順5:期末日を確認する
多くは6月30日。この日を挟んで、選手売却の意味が変わります。

実例:この5つで何が言えたか

前に書いたチェルシーの記事を、この枠組みで整理します。

項目数字
収入£490.9m(史上2番目)
給与£359m(前年£338m)
償却費£212m(前年£190m)
選手売却益£58m(前年£152m、£94m減
税引前損失£262.4m(リーグ史上最大)

給与÷収入は約73%。危険水域です。そして売却益が£94m減ったことが、損失の拡大に直結しています。

この5行だけで、「このクラブは今夏、売らなければならない」と分かります。 実際、SCRの適用初年度に最も注目されるクラブになりました。

最後に

数字は、そのクラブの過去の判断の記録です。同時に、来年何をせざるを得ないかの予告でもあります。

移籍の噂が出たとき、「なぜこのクラブがこの選手を売るのか」と思ったら、決算書のこの5行を見てください。たいてい、答えはそこに書いてあります。


出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。投資に関する助言を目的とするものではありません。

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