プレミアリーグの新しい財務ルール、SCRとSSRの仕組みと適用条件 — 2026/27から何が変わるか

〜SCR・SSRは2026/27から、課徴金は2027/28違反分から〜70%
サッカー財務ルール

SCRは選手・監督などの費用を、SSRは資金繰りや財務の耐性を確認する制度です。一方の基準を満たすだけでは、両方への適合を示せません。

2026/27からの国内制度を扱います。国内SCRのグリーン85%、変動する許容枠、UEFAの70%を分け、判定時期と適用条件を確認します。

1. SCR — いくら使えるか

決まり方

2025年11月、20クラブの投票で可決されました。賛成は14クラブ。ルール変更に必要な最低数ちょうどです(Malay Mail、Premier League)。

6クラブが反対または棄権した、ぎりぎりの可決だったということです。

なおPSRは2026/27から適用されなくなりますが、2025/26以前の違反を調査・処分する権限は残ります。過去の分は追及される、ということです。


第1部 SCR — いくら使えるか

式

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

分母には、football revenue(サッカーに関する収益)と選手売却の純損益が入ります。

分子に入るもの、入らないもの

ここが実務上いちばん重要です。

分子(スカッドコスト)に入る分子に入らない
選手の給与事務・管理部門の人件費
ヘッドコーチ(監督)の給与商業部門の人件費
移籍金の償却費(または減損)アシスタントコーチ、その他のコーチングスタッフ
代理人手数料

出典: Premier League、Brabners

監督の給与は入るが、他のコーチ陣は入らない。 全従業員の給与はそのまま使えません。手数料も、取得費に含まれ既に償却されている部分を再び加えないよう、対象範囲と処理を確認します。

女子チームとアカデミーの扱い

見落とされがちですが、重要な設計が入っています。

女子チームとアカデミーの「収入」は分母に加わる。しかし「費用」は分子に入らない。

費用を分子から除くことで投資を後押しする設計です。ただし支出しただけで比率が改善するわけではなく、実際に算入できる収入が増えるかも確認します。出典:プレミアリーグ公式。

アカデミーへの後押しは、これだけではありません。登録枠のルールも同じ方向を向いています(ホームグロウン制度)。

女子チームの収入が増えれば、適用範囲と算入方法に従ってSCRの分母に反映されます。

3つのしきい値

名前比率意味
グリーン・スレッショルド85%SCRのグリーン基準内
レッド・スレッショルド初期値115%許容枠の増減でクラブごとに変わる。超過は勝点減の対象
UEFAの上限70%欧州大会に出るクラブの実質の縛り
85グリーン115レッド70UEFA
SCRのグリーン85%、レッドの初期値115%、UEFA70%。レッドは固定値ではなく、UEFAとは集計期間等も異なる

初期の許容枠は30パーセントポイントで、85%に足すと115%です。利用状況によって翌季以降の枠が変わり、毎年一律に115%まで使えるわけではありません。

フィードバック・ループ

枠は固定ではありません。決算確認で85%を超えた分だけ翌季の許容枠が減ります。減った枠は、基準を守るなどの条件を満たすと10ポイント回復し、最大30ポイントまでです。未使用の支出余力を繰り越して増やす仕組みではありません。

罰則と適用開始

  • 85%以下:SCRのグリーン基準内です。他の財務ルールへの適合まで意味するものではありません。
  • 85%超で、そのクラブのレッド基準以下:追加確認の対象です。課徴金は2027/28の違反分からで、6月の決算確認と10月の再確認、軽減措置などの条件によります。2026/27に直ちに課徴金が発生するという説明は正確ではありません。
  • そのクラブのレッド基準超:勝点減の対象です。基本6点に、超過£6.5mごとに1点を加える方式です。判定・異議申立ての手続きを経るため、「その場で自動的に減点」とは異なります。

レッド基準は初期値115%で、全クラブに固定された上限ではありません。決算確認時の85%超過分だけ翌季の許容枠が減り、減った枠は基準を守った場合に10ポイントずつ、最大30ポイントまで回復します。未使用の余力を積み上げる制度ではありません。出典:プレミアリーグ公式。詳しい時期と条件はSCR・SSRの解説にまとめています。

課徴金の基礎額は、シーズン中と決算確認時のグリーン超過額の小さい方です。そこに85%を超えた割合を掛けます。公式の例では、基礎額£250,000、比率89%なら£250,000×4%=£10,000です。過去の遵守状況による軽減・免除があり、原則は直前2季、導入時・昇格時には特則があります。

判定日

3月1日にシーズン中の判定を行います。この計算にはリーグと事前に合意した収益等を使います。グリーン基準を超えた場合、6月の決算確認と、なお超過していれば10月の再確認を経ます。勝点減は違反したシーズンでの適用、課徴金の確定は終了後の10月が基本で、異議申立ての手続きもあります。出典:プレミアリーグ公式。


第2部 SSR — 潰れないか

SCRが「使いすぎ」を見るルールなら、SSRは「現金が尽きないか」を見るルールです。

3つのテストがあり、通常の判定日は毎年7月7日です。シーズン中の監視・追加の確認もあります。以下の基準はプレミアリーグ公式のSSR説明に基づきます。

2. SSR — 払えるか

テスト1:運転資金テスト

シーズン中の各暦月について、予測現金残高と適格な運転資金の合計が£12.5m以上であること

「年間で足りている」では通りません。毎月足りている必要があります。

テスト2:流動性テスト

今シーズンと来シーズンについて、£85mのストレステストを吸収したうえで、流動性の余裕がゼロ以上であること

£85m分の悪材料が起きても耐えられるかを問うテストです。しかも来シーズン分まで見ます。

なお流動性の計算では、スカッド市場価値の40%までを流動資産に算入できます。これは規則上の調整です。評価額の40%をすぐ現金化できることや、その額を担保に借りられることを保証するものではありません。

テスト3:自己資本テスト

負債 ÷ 調整後資産が、下の比率以下であること
シーズン上限
2026/2790%
2027/2885%
2028/29以降80%
902026/27852027/28802028/29〜
自己資本テストの上限(%)。年ごとに厳しくなる

年を追って厳しくなります。 今年通ったクラブでも、比率が後の上限を上回る場合は、同じ財務状態では通らなくなります。最初から80%以下なら、基準が下がるだけで不合格になるわけではありません。

昇格クラブの扱い

昇格クラブについて、公式説明では流動性テストと自己資本テストの判定日を10月31日としています。この説明だけから、運転資金に関する義務全体が免除されるとは判断できません。

別記事で扱った「昇格1年目の罠」に、ルール側からの猶予が1つ用意されている形です。


第3部 PSRと何が違うのか

PSR(〜2025/26)SCR+SSR(2026/27〜)
見るもの3年間の累計損失その年の比率と現金
上限所定の資本拠出等の条件を満たし、3年間プレミア所属なら調整後損失最大£105m調整後収益の85%、別途クラブごとの許容枠
判定3年間の調整後損失等SCRは3月、超過時は6月・10月も確認。SSRは通常7月7日
分子の定義損益全体選手+監督のコストだけ
許容枠SCRの仕組みとは異なる減った枠を条件付きで10ポイント回復、最大30ポイント
資金繰りの検査限定的3つのテスト

最大の変化は「金額の上限」から「比率の上限」へ移ったことです。

比率である以上、収入が大きいクラブほど使える絶対額も大きくなります。他の条件を同じとし、規則上の調整後収益が£703mなら85%相当額は約£597.6m、£228mなら約£193.8mという計算です。

これも同じ話で、収入の差が支出上限の差につながる設計です。実際の競争格差への影響は、収益配分や他の規則も含めて見る必要があります。むしろ収入を伸ばしたクラブが正当に多く使える仕組みです。

3. 何を見ればいいか

2026/27シーズンが始まったら、この順で見てください。

  1. 3月1日 — SCRのシーズン中の適合判定
  2. 6月・10月 — グリーン基準超過時の決算確認・再確認。10月には通常の監視も実施
  3. 7月7日 — SSRの通常判定。判定結果がすべて同日に公表されるとは限らない
  4. 10月31日 — 昇格クラブの流動性・自己資本テスト

そして決算のニュースを読むときは、この4つを分けて見てください。

  • 選手と監督の人件費(分子に入る)とそれ以外の人件費(入らない)
  • 償却費と減損(どちらも分子に入る)
  • 代理人手数料(分子に入る)
  • 女子チームとアカデミーの収入(分母に入るが、費用は分子に入らない)

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出典

売却益の算入期間について:国内SCRのシーズン中の判定は規定の移籍期間に対応する利益を3で割り、実績確認は当季と前2季の合計を3で割ります。売却益全額がそのまま当年の分母へ加わるという読み方はできません。規則集 Appendix 2 A.1.6(e)・A.1.13・A.1.53。具体的な補強予算への影響はリバプールの試算で説明しています。

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。規則の正確な内容は、プレミアリーグの規則集(Rulebook)が優先します。投資に関する助言を目的とするものではありません。

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