プレミアリーグの新しい財務ルール、SCRとSSRの完全解説 — 2026/27から何が変わるか
〜PSRは廃止、判定は毎年3月1日と7月7日〜3つプレミアリーグの新しい財務ルール、SCRとSSRの完全解説。2026/27シーズンからPSRが廃止され、SCR(スカッドコスト比率)とSSR(持続可能性・システム的耐性)が始まります。何が分子に入り、何が入らないのか。3つのテストとは何か。判定日はいつか。公式資料から全部まとめました。
2026/27シーズンから、プレミアリーグの財務ルールが入れ替わります。
PSR(収益性・持続可能性ルール)は廃止され、代わりに2つの仕組みが始まります。
- SCR(Squad Cost Ratio/スカッドコスト比率)— いくら使えるか
- SSR(Sustainability and Systemic Resilience/持続可能性とシステム的耐性)— 潰れないか
この記事は、公式資料から確認できた内容を1本にまとめたものです。
決まり方
2025年11月、20クラブの投票で可決されました。賛成は14クラブ。ルール変更に必要な最低数ちょうどです(Malay Mail、Premier League)。
6クラブが反対または棄権した、ぎりぎりの可決だったということです。
なおPSRは2026/27から適用されなくなりますが、2025/26以前の違反を調査・処分する権限は残ります。過去の分は追及される、ということです。
第1部 SCR — いくら使えるか
式
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
分母には、football revenue(サッカーに関する収益)と選手売却の純損益が入ります。
分子に入るもの、入らないもの
ここが実務上いちばん重要です。
| 分子(スカッドコスト)に入る | 分子に入らない |
|---|---|
| 選手の給与 | 事務・管理部門の人件費 |
| ヘッドコーチ(監督)の給与 | 商業部門の人件費 |
| 移籍金の償却費(または減損) | アシスタントコーチ、その他のコーチングスタッフ |
| 代理人手数料 |
監督の給与は入るが、コーチ陣は入らない。 この線引きは覚えておく価値があります。
女子チームとアカデミーの扱い
見落とされがちですが、重要な設計が入っています。
女子チームとアカデミーの「収入」は分母に加わる。しかし「費用」は分子に入らない。
つまり女子チームとアカデミーに投資すればするほど、比率は良くなる。ルールが投資を後押しする設計になっています。
アカデミーへの後押しは、これだけではありません。登録枠のルールも同じ方向を向いています(ホームグロウン制度)。
前に書いたとおり、WSLのクラブ全体の収益は2024/25で£90m。この分野が伸びれば、そのままSCRの分母に効きます。
3つのしきい値
| 名前 | 比率 | 意味 |
|---|---|---|
| グリーン・スレッショルド | 85% | ここまでは問題なし |
| レッド・スレッショルド | 115% | 超えると勝点減 |
| UEFAの上限 | 70% | 欧州大会に出るクラブの実質の縛り |
85%と115%の間にある30%が、複数年にわたって使える許容枠です。1年で使い切ってもいいし、数年に分けてもいい。
フィードバック・ループ
枠は固定ではありません。成績ならぬ「行儀」で増減します。
| 状況 | 翌年の枠 |
|---|---|
| 上限を守った | +10%(最大+30%まで積み上がる) |
| 超過した | 超過した割合と同じだけ減る |
守れば枠が増え、破れば枠が縮む。PSRになかった仕組みです。
罰則
罰則も数式で決まります。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 罰金(スポーツ上の制裁なし) | 超過額 × 85%を超えた割合 |
| 勝点減(レッドを超えた場合) | 基本6点+レッド超過£6.5mごとに1点 |
公式が挙げている罰金の例は、£250,000の4%超過で£10,000というものです。
判定日
毎年3月1日。シーズン中に判定されます。
PSRは決算が出そろってから3年分をまとめて見る仕組みでした。SCRはシーズンの途中で、その年の数字を見る。罰が翌々年ではなく、その場で効くようになります。
第2部 SSR — 潰れないか
SCRが「使いすぎ」を見るルールなら、SSRは「現金が尽きないか」を見るルールです。
3つのテストがあり、毎年7月7日に判定されます。
テスト1:運転資金テスト(Working Capital Test)
シーズン中の各暦月について、予測現金残高と適格な運転資金の合計が£12.5m以上であること
「年間で足りている」では通りません。毎月足りている必要があります。
テスト2:流動性テスト(Liquidity Test)
今シーズンと来シーズンについて、£85mのストレステストを吸収したうえで、流動性の余裕がゼロ以上であること
£85m分の悪材料が起きても耐えられるかを問うテストです。しかも来シーズン分まで見ます。
なお流動性の計算では、スカッド市場価値の40%までを流動資産に算入できます。選手が、資金繰りの担保として制度に組み込まれているということです。
テスト3:自己資本テスト(Positive Equity Test)
負債 ÷ 調整後資産が、下の比率以下であること
| シーズン | 上限 |
|---|---|
| 2026/27 | 90% |
| 2027/28 | 85% |
| 2028/29以降 | 80% |
年を追って厳しくなります。 今年通っても、再来年は同じ財務状態では通りません。
昇格クラブの扱い
昇格したばかりのクラブは、10月31日に判定されます。対象は流動性テストと自己資本テストの2つだけ。運転資金テストは課されません。
前に書いた「昇格1年目の罠」に、ルール側からの猶予が1つ用意されている形です。
第3部 PSRと何が違うのか
| PSR(〜2025/26) | SCR+SSR(2026/27〜) | |
|---|---|---|
| 見るもの | 3年間の累計損失 | その年の比率と現金 |
| 上限 | 3年で£105m | 収益の85%(最大115%) |
| 判定 | 決算が出そろってから | 3月1日と7月7日 |
| 分子の定義 | 損益全体 | 選手+監督のコストだけ |
| 良い行いへの報酬 | なし | フィードバック・ループ(+10%) |
| 資金繰りの検査 | 限定的 | 3つのテスト |
最大の変化は「金額の上限」から「比率の上限」へ移ったことです。
比率である以上、収入が大きいクラブほど使える絶対額も大きくなります。収益£703mのクラブは£597mまで、収益£228mのクラブは£194mまで。
前に書いたとおり、この設計はリーグ内・リーグ間の格差を縮める方向には働きません。むしろ収入を伸ばしたクラブが正当に多く使える仕組みです。
何を見ればいいか
2026/27シーズンが始まったら、この順で見てください。
- 3月1日 — SCRの判定。超過したクラブが出れば、その場で罰が決まる
- 7月7日 — SSRの判定。現金が回らないクラブが出れば、ここで表面化する
- 10月31日 — 昇格3クラブの判定
そして決算のニュースを読むときは、この4つを分けて見てください。
- 選手と監督の人件費(分子に入る)とそれ以外の人件費(入らない)
- 償却費と減損(どちらも分子に入る)
- 代理人手数料(分子に入る)
- 女子チームとアカデミーの収入(分母に入るが、費用は分子に入らない)
関連記事
出典
- Premier League「New Premier League financial system explained」 https://www.premierleague.com/en/news/4467022/new-premier-league-financial-system-explained
- Premier League「Premier League statement: New financial rules」 https://www.premierleague.com/en/news/4468470/premier-league-statement-new-financial-system
- Brabners「Out With PSR, In With SCR」 https://www.brabners.com/insights/sport/out-with-psr-in-with-scr-key-takeaways-for-the-premier-leagues-new-financial-era
- Farrer & Co「Premier League financial fair play rules reform explained」 https://www.farrer.co.uk/news-and-insights/premier-league-financial-fair-play-rules-reform-explained/
- Malay Mail「Premier League clubs vote in favour of squad cost ratio rules」 https://malaymail.com/news/sports/2025/11/22/premier-league-clubs-vote-in-favour-of-squad-cost-ratio-rules/199288
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。規則の正確な内容は、プレミアリーグの規則集(Rulebook)が優先します。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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