プレミアリーグ財務用語集

SCR、SSR、償却、減損、パラシュートペイメント。 ニュースに出てくる言葉を、23語ぶん短くまとめました。 それぞれ、くわしく書いた記事へのリンクを付けています。

回収可能価額

かいしゅうかのうがくがく / Recoverable amount

その資産から回収できる金額。使用価値と正味売却価額の、高いほう。

資産の価値は「使い続けて得られる金額」と「いま売って得られる金額」のうち、得なほうで測る。この金額が簿価を下回ったときに、減損の判定に入る。選手で言えば、使い続けて勝つことで得られる収益と、移籍金として受け取れる金額の比較になる。

使用価値

しようかち / Value in use

その資産を使い続けることで、将来得られる金額。

選手の場合は、試合に出て勝つことで得られる賞金、放映権の分配、欧州大会の収入、観客収入などが該当する。数字にしにくいが、契約満了まで主力を残す判断は、この使用価値が売却額を上回るという見立てに立っている。

正味売却価額

しょうみばいきゃくかがく / Fair value less costs to sell

いま売った場合に手に入る金額から、売るためにかかる費用を引いた額。

選手の場合は移籍金。ただし契約満了と同時にゼロになる(ボスマン判決)。若い選手ほどこの価額が長く残り、年齢を重ねるほど下がっていく。簿価がゼロでも正味売却価額が残っていれば、売れば全額が利益になる。

SCR

スカッドコスト比率 / Squad Cost Ratio

選手と監督にかけたお金が、収益の何割かを見る比率。2026/27から始まる。

式は「スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%」。分子には選手の給与、ヘッドコーチ(監督)の給与、移籍金の償却費または減損、代理人手数料が入る。事務・商業部門の人件費とアシスタントコーチは入らない。85%がグリーン・スレッショルド、115%がレッド・スレッショルド。欧州大会に出るクラブはUEFAの70%が実質の縛りになる。判定は毎年3月1日。

SSR

持続可能性とシステム的耐性 / Sustainability and Systemic Resilience

クラブの現金が尽きないかを見る3つのテスト。2026/27から始まる。

毎年7月7日に判定される。(1) 運転資金テスト=各暦月で£12.5m以上を保つこと。(2) 流動性テスト=£85mのストレステストを吸収しても余裕がゼロ以上であること(今季と来季の両方)。(3) 自己資本テスト=負債÷調整後資産が90%(2026/27)→85%(2027/28)→80%(2028/29以降)以下であること。昇格クラブは10月31日に、流動性と自己資本の2つだけで判定される。

PSR

収益性・持続可能性ルール / Profitability and Sustainability Rules

3年間の累計損失を£105mまでに抑えるルール。2026/27から廃止。

SCRとSSRに置き換わったが、2025/26以前の違反を調査・処分する権限は残る。上限はクラブごとに違い、2部にいた期間があるクラブは£105mより低くなる。ノッティンガム・フォレストが4点減点を受けたときの上限は£61mだった。

APT

関連当事者取引ルール / Associated Party Transaction

オーナーと関係の深い企業との取引を、公正な市場価値で評価し直すルール。

オーナー筋の企業が相場より高い金額でスポンサー契約を結べば、収益を水増しできてしまう。それを防ぐため、取引額を市場価値に引き直して判定する。2021年のニューカッスル買収が、このルールが作られる直接のきっかけになった。

償却

しょうきゃく / Amortisation

移籍金を契約年数で割って、毎年少しずつ費用にしていく処理。

£100mの選手を5年契約で獲得すれば、年£20mが5年間の費用になる。その年に£100mの費用が立つわけではない。契約を長くするほど1年あたりの費用は小さくなるため、チェルシーの8年契約のような手法が生まれた。SCRでは分子に入る。

減損

げんそん / Impairment

選手の帳簿上の価値を、実態に合わせて切り下げる処理。

怪我、パフォーマンス、降格などで選手の価値が下がったとき、簿価を切り下げる。切り下げた差額は、その年の費用になる。費用の総額は変わらず、タイミングが前倒しになるだけ。SCRでは償却と並んで分子に入るため、減損した年は比率が一気に悪化する。

簿価

ぼか / Book value

帳簿に残っている選手の価値。移籍金から、これまでの償却分を引いた額。

£50mで5年契約なら、1年ごとに£10mずつ減る。4年後の簿価は£10m。売却益は「売値 − 簿価」で計算されるため、簿価が小さいほど利益は大きくなる。

選手売却益

せんしゅばいきゃくえき / Profit on player sales

選手を売ったときに帳簿へ立つ利益。売値そのものではない。

「売値 − 簿価」で計算する。高い移籍金で買った選手を早く売っても、引き算する簿価が大きいので利益は小さい。チェルシーは2024/25に£300m分の選手を売ったが、会計上の利益は£31.8mだった。

ホームグロウン

Homegrown player

自クラブなどで育てた選手。帳簿の上では移籍金がゼロ。

アカデミー出身の選手には移籍金がないため、簿価はゼロ。売ればその額がまるごと利益になる。小さいクラブほど、この売却益が財務の柱になりやすい。

パラシュートペイメント

Parachute payment

降格したクラブに、最大3年間支払われる補償金。

プレミアリーグの中央配分が消える衝撃をやわらげるためのもの。ただし満額ではなく、年を追って減っていく。1シーズンで降格したクラブは2年分しか受け取れない。

中央配分

ちゅうおうはいぶん / Central payment

リーグが集めた放映権料などを、20クラブに配る仕組み。

2024/25の均等分配は、国内放映権£29.8m、海外放映権£59.2m、中央商業収入£7.9mの合計£96.9m。これは順位に関係なく全クラブが受け取る。ほかに順位に応じたメリットペイメントと、生中継の回数に応じたファシリティフィーがある。

ファシリティフィー

Facility fee

生中継された試合数に応じて払われるお金。

2024/25はリヴァプールが£24.9m(30試合)で最高、イプスウィッチが£8.9m(10試合)で最低だった。人気クラブほど中継されるため、強豪に有利に働く部分。

株主ローン

かぶぬしローン / Shareholder loan

オーナーがクラブに貸し付けるお金。無利子のことが多い。

市場で借りれば利息がかかるものを、オーナーが無利子で出す。この差額が実質的な補助にあたるため、規制の関心事になる。チェルシーのオーナーは3シーズンで£1.1bnを無利子で出している。

純負債

じゅんふさい / Net debt

借入などの負債から、手元の現金を引いた額。

総負債だけを見ると実態より重く見えることがあるため、現金を差し引いて見る。移籍金の未払い残高(分割払いの残り)を別に示すクラブもある。

代理人手数料

だいりにんてすうりょう / Agent fees

移籍や契約の交渉にかかわる代理人へ払うお金。

SCRでは分子に入る。2024/25はチェルシーが£65.1mで20クラブ最多だった。

ボスマン判決

Bosman ruling

契約が満了した選手は、移籍金なしで移籍できるとした1995年の判決。

これにより「契約残り1年」の選手の扱いが大きく変わった。満了まで待たれると移籍金がゼロになるため、クラブは1年前に売るか、契約を延長するかを迫られる。

EBITDA

利払前・税引前・償却前利益

利息と税金と償却を引く前の利益。本業でどれだけ稼いだかを見る指標。

サッカークラブは移籍金の償却が大きいため、最終利益が赤字でもEBITDAは黒字ということが起きる。帳簿の赤字と、現金が回っているかは別の話。

試合日収入

しあいびしゅうにゅう / Matchday revenue

チケット、飲食、ホスピタリティなど、試合当日に生まれる収入。

スタジアムの大きさが直接効く項目。2024/25はマンチェスター・ユナイテッドが£160mで最高、アーセナルが£154mで2位だった。SCRの分母を押し上げる手段のうち、クラブが自力で伸ばせる数少ないもの。

命名権

めいめいけん / Naming rights

スタジアムに企業名をつける権利。

20クラブのうち命名権を売っているのは8クラブ。歴史の長いクラブほど売っていない。なお報じられる金額の多くは胸スポンサーとの合算で、命名権単体は年£4〜6m規模のことが多い。

連帯貢献金

れんたいこうけんきん / Solidarity contribution

移籍金の一部を、その選手を育てたクラブへ分配する仕組み。

移籍金の5%が対象。12歳から23歳までの間に在籍したクラブへ、期間に応じて配分される。

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