プレミアリーグの放映権はどう分配されるか — 優勝と最下位で£65mの差
〜優勝と最下位の差は、たった1.6倍〜£65mプレミアリーグの放映権はどう分配されるか。2024/25シーズン、優勝したリバプールは£174.9m、最下位のサウサンプトンは£109.2m。1.6倍しか違いません。この「差が小さいこと」こそが、プレミアリーグの強さの正体です。
プレミアリーグのクラブにとって、最大の収入源は放映権料です。スポンサーでもチケットでもありません。
そして、その分け方が、このリーグの性格をほぼ決めています。
2024/25シーズンの実額
| 受取額 | |
|---|---|
| リバプール(優勝) | £174.9m |
| サウサンプトン(最下位) | £109.2m |
差は£65.7m。倍率にすると1.6倍です。
(出典:NBC Sports「Premier League prize money — How much is each table position worth?」。プレミアリーグ公式は配分額を発表していますが、内訳は画像で公開されているため、本記事では数値を報じた記事を典拠としました)
この数字をどう感じるかは、他リーグを知っているかどうかで変わります。優勝しても最下位の1.6倍しかもらえない、というのがプレミアリーグの設計です。かつてのスペインのように、上位2クラブが分配の大半を持っていく仕組みとは、根本的に思想が違います。
中央配分の内訳(2024/25)
1クラブあたりの受取額を、種類ごとに分けるとこうなります(NBC Sports)。
| 種類 | 決まり方 | 1クラブあたり |
|---|---|---|
| 均等分配(国内放映権) | 全クラブ同額 | £29.8m |
| 均等分配(海外放映権) | 全クラブ同額 | £59.2m |
| 中央商業収入 | 全クラブ同額 | £7.9m |
| 均等分配の小計 | £96.9m | |
| メリットペイメント(国内) | 1順位ごと£1.6m | £2.6m〜£32.3m |
| メリットペイメント(海外) | 1順位ごと£1.04m | 順位による |
| ファシリティフィー | 生中継された試合数 | £8.9m〜£24.9m |
受取額の6割前後が、順位と無関係な均等分配です。ここがプレミアリーグの設計の中心にあります。
なぜ差が小さいのか
分配は大きく3つの部分でできています。
1. 均等分配(全クラブ同額)
順位に関係なく、20クラブが同じ額を受け取ります。2024/25シーズンの内訳は、国内放映権から£29.8m、海外放映権から£59.2m、そしてリーグ全体の商業収入から£7.9m。合計£96.9mが、20位のクラブにも無条件で入ります(NBC Sports)。
注目すべきは、海外放映権のほうが国内より大きいことです。プレミアリーグが世界中で放送されている効果が、そのまま全クラブに均等に降ってきます。降格圏で戦うクラブも、世界市場の恩恵を等しく受けるわけです。
2. メリットペイメント(順位に応じた分)
いわゆる賞金です。2024/25シーズンでは、1つ順位が上がるごとに約£2.7m。優勝したリバプールが£53.1m、最下位のサウサンプトンが£2.6mでした(NBC Sports)。18位から17位に上がるだけで£2.7m。残留争いの最終節が異常な緊張感になる理由の一部は、これです。
3. ファシリティフィー(テレビ中継された試合数に応じた分)
生中継された回数で決まります。2024/25シーズンでは、30試合が中継されたリバプールの£24.9mから、10試合だったイプスウィッチの£8.9mまで(NBC Sports)。人気クラブほど中継されるので、ここは強豪に有利です。
国内放映権については、均等50:メリット25:ファシリティ25の比率で配分されています。半分は無条件で山分け、という設計です。
海外放映権の変化
ただし、完全に平等が守られているわけではありません。
2019/20シーズンから、海外放映権の「増加分」については順位に応じて配分する方式に変わりました。それまでの水準は均等のまま、伸びた分だけ順位で差をつける。
上位クラブからの「海外で人気を集めているのは我々だ」という圧力に対する、妥協点です。均等分配の思想は、少しずつ削られているという見方もできます。
財務ルールとの関係
2026/27シーズンから始まるSCRでは、この放映権収入が決定的な意味を持ちます。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
分母の「調整後収益」に、放映権料はまるごと入ります。つまり順位が上がれば分母が増え、使える上限が上がる。逆に降格すれば分母が崩れ、給与を払えなくなる。
ここに、この競技の残酷な循環があります。勝つと使える額が増え、負けると減る。 差は1.6倍でも、それが毎年積み重なれば、開きは開いていきます。
それでも、この設計は効いている
プレミアリーグが世界で最も稼ぐリーグになった理由として、この分配設計はよく挙げられます。
最下位のクラブでも£109m受け取れるなら、どのクラブも一定の水準の選手を揃えられます。結果として、下位クラブが上位クラブを倒す試合が起きる。その番狂わせが、放映権の価値を押し上げる。平等な分配が、商品としての面白さを作っているという循環です。
上位が総取りするリーグでは、この循環は生まれません。
見るときのポイント
順位表を見るときに、こう置き換えてみてください。
- 1つの順位=約£2.7m(消化試合に見える一戦にも、この金額がかかっている)
- 降格=約£100m規模の収入減(パラシュートで一部は補填されますが、崖は残ります)
- 中継回数が多いクラブは、ファシリティフィーで少し上乗せがある
シーズン終盤の「もう何も懸かっていない試合」は、実は存在しません。
出典
- Premier League「Premier League central payments to clubs 2024/25 season」 https://www.premierleague.com/en/news/4325409/premier-league-central-payments-to-clubs-202425-season
- Premier League「Broadcast FAQ」 https://www.premierleague.com/en/about/faq/broadcast
- NBC Sports「Premier League prize money — How much is each table position worth?」 https://www.nbcsports.com/soccer/news/premier-league-prize-money-how-much-is-each-table-position-worth
- Sports Illustrated「Premier League Prize Money: How Much Clubs Make Per Position」 https://www.si.com/soccer/premier-league-prize-money-how-much-clubs-make-per-position
- Statista「Premier League club payments」 https://www.statista.com/statistics/240912/broadcasting-payments-to-clubs-in-the-english-premier-league/
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。金額は執筆時点で確認できた公表値・報道値です。
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