パラシュートペイメントとは — 降格しても3年で約£107mが入る格差装置

〜降格しても3年で£107m降ってくる〜£107m

パラシュートペイメントとは、降格したクラブに3年間支払われるお金のことです。1年目£48.95m、2年目£40.05m、3年目£17.8m。この制度がリーグの勢力図をどう固定しているかまで見ます。

サッカー財務降格

プレミアリーグから降格すると、収入が一気に落ちます。放映権料が桁で変わるからです。

その落差を和らげるために用意されているのがパラシュートペイメントです。名前のとおり、落下の衝撃を吸収する仕組み。ところがこの制度、いま「格差の元凶」として最も批判されている制度でもあります。

106.83年合計891年目の基礎
パラシュートペイメント(£m)

いくら入るのか

降格したクラブは、降格後の3年間にわたって受け取ります。

金額中身
1年目£48.95m均等配分の55%
2年目£40.05m均等配分の45%
3年目£17.8m均等配分の20%
合計約£106.8m

(金額と割合の出典:Premier Pulse「Premier League Parachute Payments Explained」BBC Sport「Are parachute payments now just 'trampoline payments'?」。均等配分の内訳は NBC Sports による2024/25シーズンの報道値)

この「均等配分」は、放映権の均等分配分(2024/25シーズンで国内£29.8m+海外£59.2m=£89.0m)を指します。55%なら£48.95m、45%なら£40.05m、20%なら£17.8m。合計£106.8mという計算です。

1ポンド=約200円で換算すると、3年で約214億円が2部に落ちたクラブに支払われることになります。

例外が1つ。3年目の20%を受け取れるのは、プレミアリーグに2シーズン以上在籍していたクラブだけです。昇格して1年で降格した場合は、2年分だけになります。定着していないクラブには満額を出さない、という設計になっています。また、3年以内に再昇格すれば、その時点で支払いは止まります。

2025/26シーズンでは、前季に降格したレスター・シティとサウサンプトンが、それぞれ1年目の約£49mを受け取っています。

なぜ批判されるのか

制度の狙いは「軟着陸」です。降格した瞬間に給与が払えなくなってクラブが消滅する、という事態を防ぐ。ここまでは誰も反対しません。

問題は、受け取っているクラブと受け取っていないクラブが、同じリーグで戦うことです。

チャンピオンシップ(2部)24クラブのうち、パラシュートを受け取っているのは通常6クラブ前後。残りの18クラブは、その£49mなしで同じ昇格枠を争います。チャンピオンシップの平均的なクラブの年間収入を上回る金額が、降格クラブには自動的に入る。

結果として何が起きるか。降格したクラブがそのまま1年で戻ってくる。BBCが「パラシュート(落下傘)ではなく、トランポリンではないか」と報じたのは、この現象を指しています。落ちてきたクラブが、跳ね返って上がっていく。

EFL(下部リーグ運営団体)は、この格差を「重大な懸念」として繰り返し表明しています。

お金の出どころ

ここも押さえておくと理解が深まります。パラシュートペイメントは、プレミアリーグの放映権収入から支払われます。つまり、残った20クラブが分け合うはずだった原資が減っている。

降格クラブへの支払いは「慈善」ではなく、リーグ全体の分配設計の一部です。だからこそ「その分をチャンピオンシップ全体に配ったほうが健全ではないか」という議論が絶えません。

財務ルールとの関係

パラシュートを受け取るクラブには、もう一つ有利な点があります。

2026/27シーズンから、プレミアリーグの判定はSCR(スカッドコスト比率)に変わります。

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

パラシュートペイメントは収入です。つまり分母を押し上げる。降格して選手の給与を減らしながら、収入としてはパラシュートが入ってくるので、比率の上では余裕が生まれます

これが、降格クラブが2部で高い給与の選手を維持できる理由の一つです。

見るときのポイント

昇格争いのニュースを読むときは、こう見ると景色が変わります。

  • そのクラブはパラシュートを受け取っているか(=直近3年以内に降格したか)
  • 受け取っているなら何年目か(3年目は£17.8mまで落ちる。ここが勝負の年になりやすい)
  • 3年目を過ぎると崖が来る。この崖の前に昇格できなかったクラブが、その後に苦しむ

「昇格するまでの猶予は3年」という時計が、どのクラブにも回っています。


出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。金額は執筆時点で確認できた公表値です。

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