連帯貢献金のしくみ — 移籍金の5%が、育てたクラブへ渡る

〜移籍金の5%は、育てた町へ流れる〜£100m

連帯貢献金のしくみ。£100mの移籍が成立すると、£5mは12歳から23歳までにその選手を育てたクラブへ分配されます。プレミアリーグの巨額移籍が、無名のクラブを支えている仕組みを説明します。

サッカー財務育成

£100mの移籍が成立したとき、その£100m全額が売り手のクラブに入るわけではありません。

5%は、その選手を育てた過去のクラブに分配されます。

前に「移籍金は代理人手数料を含まない」「セルオン条項で一部が流れる」と書きました。もう1つ、制度として必ず差し引かれるものがあります。

5%
移籍金の5%が、育成したクラブへ分配される

連帯貢献金(Solidarity Contribution)

FIFAの規則です。中身を要約すると、こうなります(正確な条文はFIFAの規則をご確認ください)。

選手の移籍に伴って支払われる補償金の5%を差し引き、新しいクラブが、その選手の育成と教育に関わったクラブに分配しなければならない。

これはFIFAの規則そのものに書かれている文言です(FIFA「Regulations on the Status and Transfer of Players」Annexe 5)。

対象になるのは、12歳から23歳までにその選手が在籍したクラブです。

5%をどう分けるのか

年齢によって重みが変わります。

在籍していた年齢1年あたりの取り分
12歳〜15歳移籍金の0.25%(5%の5%)
16歳〜23歳移籍金の0.5%(5%の10%)

この配分表もFIFAの規則に一覧で載っています(Annexe 5)。「5%の5%」という書き方をしているのは、規則が移籍金全体ではなく、差し引いた5%を100として割り振っているからです。

£100mの移籍で計算してみます。ある選手が、地元のクラブに12歳から16歳まで4年間いたとします。

  • 12〜15歳の4年分 = 0.25% × 4 = 1%£1m

その町のクラブに、£1mが入ります。選手が去ってから10年以上たっていてもです。

一度きりではない

ここが最も重要な点です。

連帯貢献金は、その選手が移籍するたびに発生します。

20歳で移籍したときも、25歳のときも、30歳のときも。契約期間中の移籍である限り、12歳から23歳までに育てたクラブは、毎回受け取ります

ある選手がキャリアで4回移籍すれば、育てたクラブは4回受け取る。選手が成長して移籍金が上がるほど、金額も増えていきます。

発生しない場合

例外があります。

  • 契約満了後のフリー移籍では発生しません(移籍金がないため、5%を計算する元がない)
  • 国内移籍の扱いは各国協会の規則によります(FIFAの規則は国際移籍を対象としています)

前に「フリー移籍は安いとは限らない」と書きました。この観点でも、フリー移籍には育成クラブに何も還元されないという側面があります。

財務ルールから見ると

買い手のクラブにとって、この5%は追加のコストです。£100mの移籍なら、実際には£105m相当を支払っていることになります。

2026/27シーズンから始まるSCRの式では、こうなります。

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

移籍金は契約年数で割って償却され、分子に入ります。連帯貢献金を含めた取得原価が償却の対象になると考えるのが自然ですが、この点の詳細な会計処理については、公表資料から確定的な記述を確認できませんでした

売り手のクラブから見れば、受け取る額が5%目減りするということでもあります。£100mで売っても、手元は£95m。そこからセルオン条項の支払いが引かれることもあります。

この制度が守っているもの

連帯貢献金と、同じくFIFAの育成補償金(Training Compensation)は、下部のクラブが育成を続けられるようにするための装置です。

プレミアリーグの巨額の移籍金は、こうして少しずつ下へ流れます。前に書いたパラシュートペイメントが「降格クラブを守る仕組み」なら、こちらは「育てたクラブを守る仕組み」です。

もっとも、金額の規模はまったく違います。£100mの移籍で下に流れるのは£5m。上から下へ落ちる水は、細いというのが実態でもあります。

見るときのポイント

大型移籍のニュースを見たら、こう考えてみてください。

  • 移籍金の5%は自動的に差し引かれる
  • 受け取るのは、その選手が12〜23歳に在籍したクラブすべて
  • フリー移籍では発生しない(下部クラブにとっては痛手)
  • 選手が移籍を重ねるたび、育てたクラブは何度でも受け取る

無名のクラブが突然、億単位の収入を計上することがあります。その多くは、この仕組みによるものです。


出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。

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