キットサプライヤー契約はいくらか — ユニフォームを作る権利が年£90m
〜ユニフォームを作る権利が、年£90m〜£90mキットサプライヤー契約は、メーカーがクラブのブランドや販売権などを得る契約です。固定保証、販売連動、成績条件を分けると比較しやすくなります。
契約総額を年数で割った平均と、その年度の実際の収益は別です。非公表の契約金額は報道値として扱い、補強枠へ同額が加わるとは考えません。
1. 主な契約の規模
2025/26シーズン時点で確認できた金額です。
| クラブ | メーカー | 契約規模 |
|---|---|---|
| マンチェスター・ユナイテッド | adidas | 10年で最低£900m(年約£90m、2035年まで) |
| マンチェスター・シティ | PUMA | £100m規模 |
| アーセナル | adidas | 年約£75m(2030年まで) |
| リヴァプール | adidas | 10年で£600m超(2025年開始、出来高で上振れあり) |
そしてプレミアリーグ20クラブ合計では、2025/26シーズンに約£494.5mがキット契約から生まれます。
年£90mという数字を、以前に取り上げた記事と並べてみます。
| 金額 | |
|---|---|
| マンチェスター・ユナイテッド のキット契約(年) | 約£90m |
| プレミアリーグ最下位の中央配分(年) | 約£109m |
| CL上位クラブのリーグフェーズ収入 | 約€96m |
ユニフォームを作る権利だけで、リーグ最下位クラブの全放映権収入に迫ります。
2. メーカーは何を買っているのか
年£90mを払って、メーカーは何を得るのか。採算は販売収益だけでなく広告・ブランド効果にも左右され、契約額だけでは回収できるか判断できません。
買っているのは露出です。世界中の放送で、週に何度も、90分間ロゴが映り続ける。そしてファンが自らお金を払って、その広告を着て歩く。
もう一つは正統性です。「マンチェスター・ユナイテッドのユニフォームを作っているメーカー」という肩書きは、そのブランドの一般向け商品の全ラインナップに効いてきます。
3. クラブ側の会計
キット契約の収入は、商業収入(コマーシャル)に分類されます。収入の4分類(放映権・商業・試合日・選手売却益)のうちの1つです。
2026/27シーズンから始まるSCRの式では、こうなります。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
ここでの85%は国内SCRのグリーン基準です。分母は規則上の調整後の値で、国内のシーズン中の判定では事前合意した収益等を使います。欧州大会の対象クラブは、定義・期間の異なるUEFAの70%も別に確認します。費用枠の増加は、同額の移籍金を使えるという意味ではありません。公式説明。
対象年度の調整後収益に£90mを追加算入でき、ほかの条件が同じという例なら、国内85%相当の費用枠の増加は£76.5mです。欧州大会の対象クラブはUEFA側も別に計算します。契約の年額と認識する収益は、保証・出来高・履行期間によって異なります。
ここが、APTルールの話とつながります。商業収入は分母を押し上げるので、上限規制のある世界では、スポンサー契約は補強予算そのものです。だからこそ、オーナーの関連会社との取引には公正市場価値の縛りがかかっています。
キットサプライヤーは完全な第三者なので、この規制の対象外です。ナイキやアディダスが払う金額は、市場が決めた正真正銘の相場。規制されない形で分母を増やせる、数少ない道でもあります。
4. 出来高という仕掛け
リヴァプールの契約に「出来高で上振れ」とあるように、近年の契約には販売実績や競技成績に連動する条項が入っています。
クラブが強くなり、ユニフォームが売れれば、メーカーの支払いも増える。成績が収入を押し上げ、収入が補強力を押し上げ、また成績が上がる——前に何度か書いたこの循環が、ここにも組み込まれています。
5. 主なキットサプライヤー契約
出典: GiveMeSport
リヴァプールの契約はプレミアリーグ史上最大とされます。なお、マンチェスター・ユナイテッドの£900mは総額で、年あたりではありません。契約年数によって年額は変わります。
公表されている数字と、されていない数字
ここは分けておきます。マンチェスター・ユナイテッドは上場企業なので、投資家向けの決算書類を公開しています。そこにはこう書かれています——アディダスとの契約を2035年まで延長した、と(Manchester United plc 決算開示(公式PDF))。
「£900m」という金額は、この開示のどこにも書かれていません。 報道された数字です。
| 項目 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 2035年まで | 【公式】クラブの決算開示 |
| 契約規模 | 10年で最低£900m | 【推計】報道ベース |
キットサプライヤー契約は、期間は公表されるが金額は公表されないのが通例です。この記事の金額はすべて報道にもとづくもので、クラブの公表値ではない——そう読んでください。
リーグ全体では、胸スポンサー契約の合計が約£408m(2025/26)。Deloitteの分析では、キット契約は上位クラブの商業収入の4分の1程度を占めます。
6. 読むときに確認したいこと
新しいユニフォームが発表されたら、こう見てみてください。
- メーカーは変わったか(変更は契約更新のタイミング=金額が動いた合図)
- そのクラブの規模に対して契約額は妥当か(強豪ほど高く、中位以下は数億円規模)
- 出来高条項の有無(クラブの成績とメーカーの支払いが連動しているか)
ユニフォームは、そのクラブの商業的な立ち位置を示す、いちばん目に見える指標です。
関連記事
出典
- Manchester United plc「Fourth Quarter and Full Year Fiscal 2023 Results」(投資家向け公式開示PDF・アディダス2035年まで)
- ESPN「Man United sign £900m, 10-year deal with kit supplier Adidas」
- GiveMeSport「The Value of Every Premier League Club's Kit Manufacturer Deal [2025/26]」 https://www.givemesport.com/value-every-premier-league-club-kit-deal/
- fcbusiness「The Biggest Premier League Kit Deals」
- Score and Change「Overview of the 2025/2026 Premier League sponsors」
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。契約金額は報道値であり、クラブが公表していないものを含みます。
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