プレミアリーグの負傷による給与の損失 — 5年で£1,000mが「出ていない選手」に

〜5年で£1,000m、試合に出ていない選手へ〜£1,000m
サッカー財務給与

負傷で出場できなくても、契約上の給与や登録権の費用が直ちになくなるわけではありません。代役の獲得費用が重なることもあります。

本文の負傷コストは調査による推計です。クラブの追加現金損失、保険で補われる額、正式なSCRへの影響と同じ数字ではありません。

154.51マンチェスター・ユナイテッド
負傷中の選手に払った給与(5年累計・£m)

1. £1,000m

保険仲介会社ハウデンが毎年公表している負傷指数(Men's European Football Injury Index)から、確認できた数字を並べます。

金額
プレミアリーグ20クラブが過去5年間に負傷中の選手へ払った給与£1,000m超
1シーズンあたりの平均£237.78m
最も多かったクラブ(マンチェスター・ユナイテッド)£154.51m(5年間)

チェルシー、リバプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッドの4クラブは、過去5シーズンすべてで平均を上回る負傷コストを記録しています。

また、欧州の主要リーグ全体では、負傷が過去5年間で€3.45bnのコストを生んだとされています。プレミアリーグは負傷件数の約24%を占めました。

2. なぜプレミアリーグが多いのか

理由は2つ考えられます。

1. 試合数が多い
国内リーグ38試合に加え、2つの国内カップ戦、欧州大会、そしてクラブワールドカップ。休養期間が構造的に短い。(→クラブワールドカップ)(→カップ戦の賞金)

2. 給与が高い
同じ1試合の欠場でも、週給£300,000の選手と£30,000の選手では、失われる金額が10倍違います。世界最高の給与水準は、そのまま最高の負傷コストを意味します。

なお2024/25シーズンについては、負傷件数自体は増えたものの、給与換算のコストは€160m減少しました。ハウデンはこれを「最も高給の選手に長期離脱が少なかったため」と分析しています。誰が離脱したかで、金額は大きく振れます。

3. 財務ルールでの扱い

ここが残酷なところです。

2026/27シーズンから始まるSCRの式を思い出してください。

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

ここでの85%は国内SCRのグリーン基準です。分母は規則上の調整後の値で、国内のシーズン中の判定では事前合意した収益等を使います。欧州大会の対象クラブは、定義・期間の異なるUEFAの70%も別に確認します。費用枠の増加は、同額の移籍金を使えるという意味ではありません。公式説明。

分子に入るのは選手の給与です。その選手が試合に出ているかどうかは、一切関係ありません。

つまり、シーズンを通じて負傷で1試合も出られなかった選手の給与も、償却費も、まるごと分子に計上されます。戦力にならないコストが、上限枠を圧迫し続ける。

そして、その穴を埋めるために代役を獲得すれば、さらに分子が増えます。負傷は「戦力を失う」だけでなく、「補強する余力まで削る」二重の打撃になります。

4. 若手ほど壊れやすい

報告書には、気になる数字があります。

  • 21〜25歳の選手の平均離脱日数:21.76日
  • プレミアリーグの21歳未満のフォワードは、国内公式戦の120分に1回の頻度で負傷している

すでに触れたとおり、アカデミー出身の若手は財務的に最も効率のいい資産です(ホームグロウン制度)。簿価ゼロで、売却費用等を除けば売値に近い額が利益になる。

しかしその若手が最も壊れやすい。財務の切り札が、同時に最も脆い資産でもあるという構造があります。

5. 保険という選択肢

こうしたリスクに対して、クラブは保険をかけることができます。ハウデンのような保険仲介会社が毎年この指数を公表しているのは、そこに市場があるからです。

保険料は費用として発生しますが、長期離脱が起きたときの給与負担を軽減できます。ただし、高給の選手ほど保険料も高くなるため、完全にカバーするのは現実的ではありません。


6. 読むときに確認したいこと

負傷のニュースを読むときは、こう考えてみてください。

  • その選手の週給 × 離脱週数が、そのまま消える金額
  • 離脱中もSCRの分子には計上され続ける
  • 代役を獲れば、分子はさらに増える
  • 若手ほど離脱しやすく、最も効率のいい資産が最も脆い

「主力が3か月離脱」という一行は、順位の話であると同時に、数億円が消える話でもあります。

売却益とSCRの区別:会計上の売却益は売却額から残存簿価・売却費用等を引いて求めます。国内SCRでは規定の対象期間の純損益を3で割って扱い、UEFAも原則36か月を12か月相当に換算します。給与・償却の削減は比較期間に応じて別に計算します。国内規則 Appendix 2、UEFA第93条。

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出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。

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