サッカーの代理人手数料は年いくらか — プレミアリーグが1年で£460mを払った記録
〜ピッチに立たない人へ、1年で£460m〜£460m代理人手数料は、移籍金や給与とは別に確認すべき負担です。FAの公表額から、各クラブが対象期間に支払った規模を比較できます。
支払額は、その期の会計上の費用やSCR算入額と一致するとは限りません。資産に含めて償却する分を、費用に重ねて足さないことが大切です。
1. FA公表額とクラブ別の比較
FAが公表した集計期間(2025年2月4日〜2026年2月2日)に、プレミアリーグ20クラブが代理人に支払った総額は、£460,300,308でした。
推計ではありません。FAが規則にもとづいて公表している実額です(The FA「Football Agent Fees 2025-26」公式PDF)。
前年からの伸びも公表されています。
| 期間 | プレミアリーグ合計 |
|---|---|
| 2024/2025 | £409,137,387 |
| 2025/2026 | £460,300,308 |
| 差 | ↑13% |
20クラブすべての金額
公式PDFに載っている全20クラブを、多い順に並べます。
| 順 | クラブ | 代理人手数料 |
|---|---|---|
| 1 | チェルシー | £65,102,247 |
| 2 | アストン・ヴィラ | £38,444,289 |
| 3 | マンチェスター・シティ | £37,358,301 |
| 4 | リヴァプール | £33,881,544 |
| 5 | アーセナル | £32,149,359 |
| 6 | マンチェスター・ユナイテッド | £31,777,462 |
| 7 | ウルヴァーハンプトン | £25,960,372 |
| 8 | トッテナム | £21,384,701 |
| 9 | ボーンマス | £20,883,523 |
| 10 | ニューカッスル | £20,284,806 |
| 11 | ブライトン | £19,520,800 |
| 12 | ウェストハム | £18,348,058 |
| 13 | クリスタル・パレス | £16,848,734 |
| 14 | リーズ | £13,990,935 |
| 15 | ブレントフォード | £12,743,523 |
| 16 | ノッティンガム・フォレスト | £12,210,822 |
| 17 | フラム | £11,434,784 |
| 18 | サンダーランド | £10,627,772 |
| 19 | エヴァートン | £9,990,374 |
| 20 | バーンリー | £7,357,902 |
| 合計 | £460,300,308 |
出典: The FA「Football Agent Fees 2025-26」(公式PDF)
チェルシーの£65,102,247は突出しています。 2位アストン・ヴィラの1.7倍、最下位バーンリーの8.8倍です。
8年契約の話を思い出してください。チェルシーは若い選手を大量に、長期契約で集めました。契約1件ごとに代理人手数料が発生します。件数が多ければ、合計も膨らみます。
2. 他リーグとの規模の違い
FAは他のリーグの数字も同時に公表しています。
| リーグ | 代理人手数料 |
|---|---|
| プレミアリーグ | £460,300,308 |
| チャンピオンシップ | £69,665,489 |
| リーグワン | £14,041,489 |
| リーグツー | £2,613,332 |
| ナショナルリーグ以下 | £1,174,550 |
| 男子の合計 | £547,795,168 |
| 女子スーパーリーグ | £3,797,914 |
| 女子スーパーリーグ2 | £528,778 |
イングランドの男子サッカー全体で£547.8m。そのうち84%がプレミアリーグです。
前に女子サッカーの収入について書きましたが、代理人手数料で見ると男女の差はさらに極端です。女子の合計£4,326,692は、プレミアリーグ最下位のバーンリー(£7,357,902)にも届きません。
2部では、降りてきたクラブが払う
チャンピオンシップの上位を見ると、はっきりした傾向があります。
| クラブ | 代理人手数料 | 備考 |
|---|---|---|
| イプスウィッチ・タウン | £11,738,920 | プレミアから降格 |
| サウサンプトン | £8,381,358 | プレミアから降格 |
| レスター・シティ | £5,866,587 | プレミアから降格 |
| (参考)コヴェントリー・シティ | £1,497,990 | 昇格を勝ち取った側 |
上位3クラブはすべて、プレミアリーグから落ちてきたクラブです。
理由はパラシュートペイメントと契約にあります。降格しても選手の契約は続き、入れ替えのための移籍が増える。降格したクラブほど動かざるを得ない、という構造がそのまま数字に出ています。(→昇格と降格の収支)
昇格したコヴェントリーの£1,497,990と比べると、約8倍の差です。
3. 代理人の業務と会計処理
「仲介するだけで£65m」という言い方は、正確ではありません。代理人の仕事は、実際にはかなり広い範囲に及びます。
- 移籍先の交渉(給与、契約年数、ボーナス条件)
- 買い手クラブの開拓(売りたいクラブに代わって候補を探す)
- 契約書の精査
- 選手の生活支援(移住、学校、税務)
そして重要なのは、代理人がいなければ移籍が成立しない場面が多いことです。クラブ同士が直接交渉すると角が立つ話——「その選手、放出を考えていますか」——を、代理人が非公式に運びます。取引の潤滑油として機能しています。
財務ルールでの扱い
代理人手数料は、2026/27シーズンから始まるSCRで、はっきりと分子に入ります。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
ここでの85%は国内SCRのグリーン基準です。分母は規則上の調整後の値で、国内のシーズン中の判定では事前合意した収益等を使います。欧州大会の対象クラブは、定義・期間の異なるUEFAの70%も別に確認します。費用枠の増加は、同額の移籍金を使えるという意味ではありません。公式説明。
分子=給与+移籍金の償却費(減損を含む)+代理人手数料。
ここが効いてきます。移籍金は契約年数で割って費用にできますが、代理人手数料の扱いは移籍金とは別項目として、はっきり名指しでスカッドコストに含められています。
前に「フリー移籍が安いとは限らない」と書きました。理由の一つがこれです。移籍金ゼロの選手ほど、代理人手数料とサインボーナスは高くなる傾向があります。移籍金を払わずに済んだ分が、そのまま代理人に回っている、という見方もできます。
4. 開示の意味と読むときの注意
FAがこの数字を公表しているのは、透明性の確保が目的です。
代理人業務は、長らく不透明な領域でした。誰が誰の代理人なのか、いくら受け取ったのか。利益相反(売り手と買い手の双方から報酬を得る二重代理)の問題も指摘されてきました。
金額を全公開すれば、少なくとも異常な支払いは目に見えるようになります。「このクラブだけ突出している」という事実が、外から確認できる。チェルシーの£65.1mという数字が話題になるのは、この仕組みがあるからです。
見るときのポイント
移籍のニュースを読むときに、こう補って考えてみてください。
- 報じられる「移籍金£50m」に、代理人手数料は含まれていません(別に発生します)
- フリー移籍ほど、代理人への支払いが大きくなりやすい
- 毎年公表されるクラブ別の代理人手数料は、そのクラブの移籍戦略を映す鏡になります
移籍の総コストは、報道される移籍金より、いつも少し大きい。その差額の行き先が、この£460mです。
関連記事
出典
- The FA「Football Agent fees and transactions for 2025-26 reporting periods published」
- The FA「Football Agent Fees 2025-26」(クラブ別の実額・公式PDF)
- Premier League「New Premier League financial system explained」
- Brabners「Out With PSR, In With SCR」
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。数値は執筆時点で確認できた公表値です。
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