女子サッカーの収入が4年で3倍近くに — WSLは£32mから£90mへ

〜4年で3倍。ただし85%を4クラブが占める〜£32m

女子サッカーの収入が4年で3倍近くに。WSLクラブの合計収入は2024/25シーズンに£90m。2021/22の£32mから3倍近い伸びです。ただし試合日収入の85%を4クラブが占めています。急成長の中身と、その偏りを見ます。

サッカー財務女子サッカー

これまでプレミアリーグの数字を扱ってきました。£6.78bnの収入、£4.4bnの給与総額。桁が大きすぎて感覚が麻痺します。

女子スーパーリーグ(WSL)の数字は、その約75分の1です。しかし伸び方は、男子とはまったく違う景色を見せます。

収入の推移

シーズンWSLクラブの合計収入
2021/22£32m
2023/24£65m(前年比+34%)
2024/25£90m
2025/26(予測)£100m超

4年で3倍近く。イングランド女子代表が2022年の欧州選手権を制した以降、商業収入を中心に伸び続けています。

前に書いた男子プレミアリーグの成長率は、2024/25シーズンで+6.8%でした。規模は75倍でも、成長率では女子が圧倒しています

中身を分解する

2024/25シーズンの内訳を見ると、性格がよく分かります。

試合日収入:£14m(+16%)

伸びてはいますが、前年より成長は鈍化しました。そして注目すべきは偏りです。

クラブ試合日収入
アーセナル£5.9m
チェルシー£3m
マンチェスター・シティ£2m
マンチェスター・ユナイテッド£1.2m

この4クラブだけで、WSL全体の試合日収入の85%を占めています。アーセナル1クラブで、リーグ全体の4割超。

放送収入:£11m(+11%)

全収入に占める割合は13%です。男子プレミアリーグでは放映権が収入の中心ですが、女子リーグはまだ商業収入(スポンサー)が主軸という構造の違いがあります。

その商業面では、バークレイズが冠スポンサー契約を更新し、3年で£45m。英国の女子サッカーとしては史上最高額の契約です。

財務ルールとの関係

ここで、前に書いた話がつながります。

プレミアリーグのPSRでは、女子チームにかかる費用は損失計算から差し引ける一方、女子チームが生む収入は計算に含まれます

つまり男子クラブにとって、女子チームへの投資は「費用は罰されず、収入だけが評価される」構造になっています。2026/27から始まるSCRでも、分子のスカッドコストはトップチーム(男子)の選手・監督が対象です。

アーセナル、チェルシー、マンチェスター・シティといった男子の強豪が女子チームに投資している背景には、この非対称も働いています。純粋な理念だけの話ではありません。

この偏りが意味すること

一方で、85%が4クラブに集中しているという事実は、男子リーグが辿った道を、より速い速度で辿っていることを示します。

男子の場合、格差を抑えるために放映権の均等分配という装置がありました(優勝と最下位で1.6倍)。女子リーグの放送収入はまだ£11m規模で、均等配分によって格差を埋めるだけの原資がありません

成長期に格差が固定されると、あとから直すのは難しい。いまWSLがどんな分配設計を選ぶかは、10年後のリーグの形を決めます。

見るときのポイント

女子サッカーのニュースを読むときは、こう見てください。

  • 収入の伸びは男子より速いが、規模はまだ75分の1
  • 収入の主軸は放映権ではなくスポンサー
  • 男子クラブが投資する理由には、財務ルール上の非対称もある
  • 上位4クラブへの集中が、今後の焦点になる

数字が小さいうちのほうが、変化ははっきり見えます。いまの女子リーグは、財務を追いかけるには最良の教材かもしれません。


2024/25シーズンの数字

Deloitteの集計では、WSLのクラブ全体の収益は£90m。前年の£65mから39%(£25m)増で、過去最高です(Deloitte)。

種類2024/25前年からの変化
商業収入£41m+£15m
試合日収入£14m+16%(+£2m)
放映権収入£11m+11%
合計£90m+39%
41商業14試合日11放映権
WSLクラブ全体の収益の内訳(2024/25・£m)

もう1つ、見逃せない数字があります。上位4クラブだけで、リーグ全体の収益の71%を占めています(前年は66%)。伸びてはいるものの、その伸びは一部のクラブに集中しているということです。

出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。

記事一覧にもどる