リバプールのSCRと補強予算 — 2027年冬・夏に£50m、£100mを使うための条件

〜£50mの補強には、年£18.5mの余力が必要な例〜£50m

リバプールは2027年冬・夏にいくら補強できるのか。最新公表決算と国内SCR・UEFAの規則を確認し、売却なしで£50m・£100mを使うために必要な年間余力と、売却を伴う場合の試算を示します。確定予算と条件付きの計算を区別します。

サッカー財務リヴァプールルール

リバプールが今冬、確実に使える移籍金はいくらか。公開情報だけでは、保証できる金額を算定できません。 これは「予算ゼロ」という意味ではありません。クラブがリーグ・UEFAへ提出する対象費用や調整後収益、将来の支払いが、すべて公開されていないためです。

ただし、「いくら余裕があれば、どの規模の補強が成立するか」は計算できます。以下は2026年9月6日時点、今冬=2027年1月、来夏=2027年夏として読む記事です。

まず結論を置きます。5年契約、取得時の関連費用を移籍金の5%、給与・賞与・雇用主負担等を合わせて年£8mと仮定すると、次の条件になります。金額はすべてポンドで、mは100万です。

追加補強の移籍金売却なしで必要な通年の費用余力後述の売却例が成立した場合、もともと必要なUEFA側の通年余力
£50m£18.5m約£4.0m以上
£100m£29.0m約£14.5m以上
£150m£39.5m約£25.0m以上

この表はリバプールの確定予算でも、現状の余力の予測でもありません。条件を満たすための逆算表です。 売却例の仮定と計算は第3節で開示します。国内SCR・資金繰り・他のUEFA規則も別途満たす必要があります。

1. リバプールの決算から、いま確認できること

最新公表決算は2025年5月期

クラブの財務情報ページで確認できる最新の通期資料は、2025年5月31日までの連結決算です。会社は The Liverpool Football Club and Athletic Grounds Limited。次の数字は第三者の推計ではなく、クラブ掲載の決算PDFの印刷ページ12・13・24・25に記載されています。

項目2025年5月期の連結値読むときの注意
売上高£702.722m規則上の調整後収益とは別
全従業員の人件費£427.727m選手・監督だけの費用ではない
登録権の償却費£117.165mその後の獲得・売却を含まない
登録権の減損£0.183m償却とは別の費用
登録権売却益£53.268m売却代金そのものではない
税引前利益£15.212m使える現金や補強枠を意味しない
期末の現金・預金£2.541m2025年5月31日の残高。現在の財布ではない

全従業員の人件費を売上高で割ると、約60.9%です。しかし、これを「リバプールのSCRは60.9%」とは呼べません。費用の対象者、償却・減損、収益の調整、売却益の集計期間が違います。現時点の正式な国内SCR・UEFA比率は、今回確認した公表資料には示されていません

決算後の補強を、無視できない

同じ決算の注記27、印刷ページ36には、期末後の選手取引について純支払額£229.0m、売却による利益£104.7mとあります。これは当該決算の承認時点までに契約した取引の記述で、2026年夏の最終集計ではありません。£229mをそのまま1年の償却費に足すこともできません。

その後も選手構成は変わっています。

  • 2026年夏の退団:クラブはサラー、ロバートソン、コナテらの退団を発表。費用が減る可能性はありますが、退団発表だけで正確な削減額は分かりません。クラブ公式のリテインドリスト
  • バルコラの加入:8月31日の獲得は公式に確認できますが、発表は契約金額・給与を開示していません。公式サイト内の「Media watch」に出た金額も、クラブの公式開示とは区別します。獲得発表
  • 冬に入る予定の契約:9月4日にはエンゲサンの2027年1月加入を発表。加入後も今季はブレストへのローンが予定されています。将来の補強余力を考える際は、こうした契約済みの負担やローン条件も先に織り込む必要があります。獲得合意の発表

したがって、古い決算で見えた余裕から、夏の移籍金の純支出を引くだけでは冬の予算になりません。

2. 国内85%とUEFA70%を、別々に確認する

リバプールは2026/27のチャンピオンズリーグ出場を確認済みです。クラブ公式の組み合わせ発表

そのため、国内SCRのグリーン基準85%だけで補強額を決めることはできません。UEFAのスカッドコスト上限70%も確認します。ただし、同じ収益・費用に85%と70%を掛けるだけの比較ではなく、それぞれの規則で別の計算が必要です。プレミアリーグ公式解説

売却益£30mが、そのまま£30mの分母増になるわけではない

ここは補強予算の試算で間違えやすい点です。

国内SCRUEFAのスカッドコストルール
基本となる上限グリーン85%。許容枠は別に存在70%
売却益等の扱いシーズン中は規定の移籍期間に対応する集計額を3で割る。実績確認では当季と前2季の合計を3で割る原則36か月の純損益等を12か月相当に換算
主な費用・収益の対象期間シーズンを基礎とする計算と事前合意・調整原則12月31日までの12か月

国内の根拠は2026/27規則集 Appendix 2のA.1.6(e)、A.1.13、A.1.53。UEFAの根拠は第93条です。

UEFAには5月末決算のクラブ等が11月末を基準とする代替期間を申請できる規定もあります。リバプールが実際に選択した期間までは今回確認できていないため、「冬なら半年分だけ」とは置きません。

ほかの条件が変わらず、£30mの追加売却益が対象期間へ入る例なら、年換算の分母増は£10m。費用枠への効果は国内グリーンで£8.5m、UEFAで£7mという考え方になります。過去の利益が集計から外れる効果や、売った選手の費用削減は別に計算します。

国内の115%までを「確実に使える枠」とは呼ばない

国内のレッド基準115%は初期値で、許容枠は利用状況で変わります。また2026/27は課徴金を課さない一方、翌季の枠が縮む仕組みやレッド超過の勝点減はあります。課徴金は2027/28の違反分からです。公式説明

この記事の補強例は、国内の許容枠の消費を前提にせず、欧州大会への継続出場も考えて読むための試算にします。

3. 売却なし・売却ありで、どの規模まで届くか

まず移籍金を年間費用へ置き換える

以下は市場相場の予測ではなく、本記事が置く共通条件です。

  • 新たに選手1人を獲得し、5年の定額償却を行う。
  • 移籍金をFとし、取得時に資産計上する関連手数料等をFの5%と置く。
  • 給与・賞与・雇用主負担等を合わせた費用を通年£8mと置く。手取り年俸ではない。
  • 上記以外の当期費用、減損、追加出来高等は置かない。発生する契約なら別に引く。

この場合、通年の追加費用=1.05F÷5+8=0.21F+8です。費用の二重計上を避けるため、資産計上した手数料はこの償却に含め、もう一度足しません。

移籍金F年間償却費(関連費用込み)給与等通年の合計
£50m£10.5m£8m£18.5m
£100m£21m£8m£29m
£150m£31.5m£8m£39.5m

つまり£50mの選手を売却なしで加えるには、この条件で年間£18.5mを継続して負担できる余裕が必要です。移籍金の支払資金は別途確保します。

売却を伴う場合の具体例

特定の選手を売ると予想するものではありません。売却額£40m、売却時の簿価£10m、売却関連費用£2mの選手を想定します。

売却益は 40−10−2=£28m。追加利益が全額対象期間に入り、ほかの条件が変わらなければ、UEFAの年間費用枠を押し上げる効果は 28÷3×70%=約£6.53mです。

さらに、売却する選手の給与等と、売らずに保有する場合の償却費が、比較する通年で合計£8m減ると仮定します。売却に伴う費用や残存簿価は上の売却益で処理済みとし、重ねて引きません。

UEFA側の通年余力の改善=£6.53m+£8m=約£14.53m。 国内グリーン側は、同じ利益・費用削減を算入できる仮定なら 28÷3×85%+8=約£15.93mです。適用期間が違うため、実取引ではそれぞれに照合します。

この例なら、£50mの補強に必要な元のUEFA余力は 18.5−14.53=約£3.97m。冒頭の表では不足しない方向に丸め、約£4.0m以上としました。

残りの年間余力から、移籍金へ逆算する

次の表の「残りの年間余力」はリバプールの推定値ではありません。既存選手の契約、契約済みの加入、将来の費用、規則上の調整まで反映した後に、UEFA側で仮にその余力が確認できた場合の例です。別に国内グリーン基準にも収まることを確認します。

確認できたと仮定するUEFA側の通年余力売却なしの移籍金上限上記売却例が成立した場合
£10m約£9m約£78m
£20m約£57m約£126m
£30m約£104m約£173m

算式は 移籍金上限=(年間余力−新加入選手の給与等£8m)÷0.21。売却ありでは余力に約£14.53mを足します。表示は計算上の上限を超えないよう£1m単位で切り下げました。複数人を買う場合は、その全員の給与等を引き直します。

この表から言えるのは、「リバプールは£126m使える」ではなく、年£20mの余力と、この売却条件、国内ルール・現金等の条件がそろえば、モデル上は約£126mまで届くということです。

4. 今冬と来夏で、何を変えて読むか

2027年1月:半季の安さより、翌季の負担を見る

冬に加入すれば、国内の当該シーズンに計上する費用は夏加入より短い期間になることがあります。しかしUEFAは原則暦年で見るため、1月加入を「半年分しかかからない補強」と扱うのは不適切です。代替期間の利用や実際の取得日でも変わります。

そこで本記事は、今冬の検討にも通年の負担を使います。これは資金調達や規則適合を保証する安全額ではなく、短期の費用圧縮だけで補強額を大きく見せないための計画方法です。

冬に£50mの選手を買うなら、冒頭の条件で通年£18.5m。今季に収まることに加え、2027/28にもその負担を維持できるかを確認します。売却する場合も、給与等の削減を当季に丸1年分計上してはいけません。

2027年夏:CL出場の有無と、過去の売却益の入れ替わり

来夏の余力では、次の情報が必要です。

確認するもの予算への影響
2025/26決算と2026/27の見通し大型補強後の年間費用を更新する
2027/28の欧州大会出場大会収入と適用規則を見直す。CL逸失だけでUEFA対象外とは限らない
集計期間から外れる過去の売却益新しい売却をしても、分母の純増が小さくなる場合がある
契約延長・満了・ローン・加入予定給与、償却、関連費用の増減を更新する
未払移籍金・借入枠・月別の資金計画費用枠があっても現金が足りるかを確認する

例えば、調整後の年間収益が£50m下がり、費用が同じという感応度を見ると、UEFA70%の費用枠は£35m減ります。これはリバプールがCLを逃した場合の損失予測ではなく、収益見通しの違いが予算へ与える影響を示す計算です。国内のシーズン中の判定では、事前合意した収益等も確認します。

逆に、現金が増えたからといってSCRの分母が同額増えるわけではありません。期末の現金£2.541mだけで「買えない」と決めつけることも、オーナーの資金力だけで「買える」と決めつけることもできません。

現時点で示せるライン

確定ライン:公開情報から保証できる追加移籍金額は、算定できません。 ゼロと断定するものでもありません。

売却なしの条件:£50mなら通年£18.5m、£100mなら通年£29m。 これは給与等年£8m・5年償却・関連費用5%という本記事の設定です。

売却ありの条件:売値よりも、簿価・売却費用を引いた利益と、将来の費用削減が重要です。 本文の£40m売却例なら、UEFA側の通年余力は約£14.53m改善します。ただし、その改善が何年続くか、代わりに誰を獲るかまで確認します。

リバプールのSCRを読むときに欲しいのは、見栄えのよい「あと£100m」だけではありません。その補強額が成立する条件を、後から検算できることです。今冬・来夏の決算や契約情報がそろえば、この表の仮定を確認できた数字へ置き換えられます。

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出典・計算について

共通条件・売却例・年間余力£10m/£20m/£30mはすべて筆者が設定した説明用の仮定です。実在選手の給与や売却額の予測ではなく、クラブの承認済み予算でもありません。個別の契約条件・適用規則・算入期間が変われば結果も変わります。

本記事は公開情報に基づく個人の非公式な解説であり、リバプールFC、プレミアリーグ、UEFAとは関係ありません。補強の実行や規則適合を保証するものではありません。

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