サッカー選手の手取りと税金 — 週給£60,000の選手が実際に受け取る額
〜週給の半分は、税金として消える〜£60,000サッカー選手の手取りと税金。イングランドの高額所得者は45%課税。年収£3,000,000の選手の手取りは約£1,516,900です。半分が税金で消えるのに、なぜ選手はプレミアリーグに来るのか。そして「肖像権」という抜け道の話。
「週給£300,000」という見出しを見て、その選手が毎週£300,000を受け取っていると思う人はいないでしょう。
では、実際にはいくら残るのか。そしてクラブは、税金のことをどう計算に入れているのか。
まず税率
イングランドの所得税は、こう積み上がります。
| 課税所得 | 税率 |
|---|---|
| 〜£50,270 | 20% |
| £50,271〜£125,140 | 40% |
| £125,141〜 | 45% |
出典: GOV.UK「Rates and thresholds for employers 2026 to 2027」(英国政府公式)
さらに、高額所得者は基礎控除(Personal Allowance)が段階的に消えます。プレミアリーグの選手は実質的に控除ゼロで、収入の大部分に45%がかかります。
具体例で見ます。パンデミック前のプレミアリーグの平均週給は約£60,000、年換算で£3,000,000超でした。この年収の場合、所得税と国民保険料を引いた手取りは約£1,516,900。
£3,000,000が£1,516,900になります。ほぼ半分です。
クラブ側の負担
ここで見落とされがちな点があります。クラブが「£3,000,000の選手」と言うとき、それは支払う額であって、選手が受け取る額ではありません。
つまり、選手に手取り£1,516,900を渡すために、クラブは£3,000,000払っています。手取りベースで他国のクラブと競争しようとすると、名目の給与を倍近く積む必要があるということです。
これがプレミアリーグの給与総額が£4,400,000,000に達した理由の一部でもあります。高税率の国で世界最高の選手を集めようとすれば、名目額は膨らみます。
肖像権という仕組み
ここで登場するのが肖像権(image rights)です。
選手の収入は、給与だけではありません。ある解説によれば、プレミアリーグの選手の場合、基本給は総収入の60〜70%程度で、残りの30〜40%は契約時のサインボーナス、肖像権収入、出場給、成績ボーナスといった形をとります。
肖像権の扱いが重要です。選手個人の給与ではなく、選手が設立した会社の収入として処理すると、所得税ではなく法人税の対象になり得ます。
ここで金額の規模が効いてきます。英国の法人税は2023年4月から利益の大きさで税率が変わるしくみになりました(GOV.UK公式)。
| 会社の利益 | 法人税率 |
|---|---|
| £50,000以下 | 19% |
| £50,000〜£250,000 | 19%と25%の間(段階的に調整) |
| £250,000超 | 25% |
トップ選手の肖像権収入はこの上限を軽く超えるので、実際に効いてくるのは25%のほうです。それでも所得税45%とは20ポイントの差があります。金額が大きいほど、この差は効きます。
「法人にすれば19%」という説明を見かけますが、それは利益が£50,000以下の小さな会社の話です。
ただしHMRC(英国歳入関税庁)は、適切に組成された肖像権契約は認めるものの、実態が伴わない場合は所得税の対象と判断することがあります。無条件の抜け道ではありません。
財務ルールとの関係
2026/27シーズンから始まるSCRの式では、こうなります。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
分子に入るのは、クラブが支払う額です。選手の手取りではありません。つまり、税金で消える分もクラブの負担として計上されます。
そして肖像権として支払われる部分も、クラブから選手側への支払いである以上、スカッドコストに含まれると考えるのが自然です(この点の詳細な取り扱いについては、公表資料から確定的な記述を確認できませんでした)。
なぜそれでも来るのか
半分が税金で消えるのに、世界最高の選手がプレミアリーグに集まります。理由は単純で、名目の金額そのものが、他リーグより大きいからです。
そして税率の高さは、選手個人よりクラブの負担になっています。高い税率のコストを、クラブが名目給与の上乗せという形で引き受けている構図です。
しかもクラブの負担は給与だけではありません。 雇用主は従業員の給与に対して15%の雇用主国民保険料を別に払います(GOV.UK公式)。年£3,000,000の選手なら、それだけで年£450,000近くが上乗せされる計算です。
前に書いたSCRの分子は「給与+償却費+代理人手数料」ですが、この雇用主負担分も人件費として乗ってきます。表に出る週給の数字より、クラブが実際に負担している額は大きい——ここは押さえておく価値があります。
見るときのポイント
給与の報道を読むときは、こう補ってください。
- 報じられる週給は税引前(手取りは半分程度)
- 総収入のうち3〜4割は給与以外(ボーナス・肖像権など)
- クラブの負担は選手の手取りの倍近い
「£300,000プレイヤー」は、クラブにとって年間£15,000,000超の固定費です。
出典
- GOV.UK「Rates and thresholds for employers 2026 to 2027」(所得税・国民保険の公式税率) https://www.gov.uk/guidance/rates-and-thresholds-for-employers-2026-to-2027
- GOV.UK「Corporation Tax rates and reliefs」(法人税の公式税率) https://www.gov.uk/corporation-tax-rates
- PayFit「How much tax does a Premier League footballer pay?」 https://payfit.com/blog/how-much-tax-does-a-premier-league-footballer-pay/
- Skybound Wealth「How Footballers Are Taxed on Signing Bonuses, Image Rights & Appearance Fees」 https://www.skyboundwealth.com/technical-guides/how-footballers-are-taxed-on-signing-bonuses-image-rights-appearance-fees
- The Accountancy Partnership「How Do Footballers Pay Tax?」 https://www.theaccountancy.co.uk/tax/how-do-footballers-pay-tax-330098.html
- Welby Associates「How Much Tax Does the Premier League Generate」 https://www.welbyassociates.co.uk/news/2024/11/how-much-tax-does-the-premier-league-generate
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。税務に関する助言を目的とするものではありません。
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