ベゾスがリヴァプールのオーナーになったら何が変わるか — ルールから読む5つ
〜移籍予算は増えない〜5つベゾスがリヴァプールのオーナーになったら何が変わるか。もし1892 Holdingsが選択権を行使して過半数株主になったら、リヴァプールに何が起きるのか。期待や予想ではなく、プレミアリーグとUEFAの規則の条文から、確実に言える5つを挙げます。
1892 Holdingsには、12か月以内に約$8bnで過半数株主になる選択権が付いています。
仮にこれが行使された場合、リヴァプールに何が起きるのか。
ここでは期待や予想ではなく、規則の条文から確実に言えることだけを5つ挙げます。
1. 移籍予算は増えない
いちばん誤解されやすい点です。
2026/27から始まるSCRの式を確認します。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
分母は「調整後収益」です。football revenue(サッカーに関する収益)と選手売却の純損益で構成されます(Premier League)。
オーナーが振り込んだ金額は、この分母に一切入りません。
£1,650mが動こうと、$8bnの評価がつこうと、選手の給与に回せる枠は1ポンドも広がりません。
さらにリヴァプールはCLに出るため、実質の縛りはプレミアの85%ではなくUEFAの70%です。前に書いた概算では、リヴァプールの比率は約77.5%。すでにUEFAの上限を超えています。
オーナーの資金でできるのは、借入の返済、スタジアムや練習場への投資、赤字の穴埋めまでです。
2. 関連当事者取引(APT)の審査対象になる
ここが最も具体的に効いてきます。
前に書いたとおり、プレミアリーグにはAPTルールがあります。オーナーと関係の深い企業との取引は、公正な市場価値に引き直して評価されるという規則です。
2021年のニューカッスル買収が、このルールが作られる直接のきっかけでした。
ベゾスが関わるということは、アマゾンをはじめとする関連企業とのスポンサー契約が、すべてこの審査の対象になるということです。相場より高い金額で契約しても、分母には市場価値の分しか算入されません。
なお付け加えると、アマゾンはプレミアリーグの英国内放映権から撤退しています。2019年から20試合を放送していましたが、2025/26からの契約(4年・£6.7bn)には入札せず、SkyとTNTが取得しました(Deadline)。
放映権の面での直接の利害関係は、いまのところありません。
3. 株主ローンの扱いが問われる
前に書いたとおり、オーナーがクラブに無利子で貸し付けるケースは珍しくありません。チェルシーのオーナーは3シーズンで£1.1bnを無利子で出しています。
市場で借りれば利息がかかるものを、オーナーが無利子で出す。この差額が実質的な補助にあたるため、規制の関心事になります。
新オーナーが資金を入れる場合、それが出資なのか貸付なのか、貸付なら利率はいくらかが問われます。SSRの自己資本テスト(負債÷調整後資産)にも直接効いてきます。
| シーズン | 自己資本テストの上限 |
|---|---|
| 2026/27 | 90% |
| 2027/28 | 85% |
| 2028/29以降 | 80% |
年を追って厳しくなります。
4. スタジアムと練習場への投資は、比率を悪化させない
一方で、確実に自由が広がる領域もあります。
前に書いたとおり、スタジアムの建設費はSCRの分子に入りません。いくらかけても比率は悪化せず、完成後は試合日収入という形で分母だけを押し上げます。
アンフィールドの収容は61,276人。リーグ3位です。マンチェスター・ユナイテッドの74,500人とは13,000人以上の差があります。
オーナーの資金が最も効率よく効くのは、ここです。 選手には回せないが、箱には回せる。そして箱は将来の分母を増やします。
5. 命名権という選択肢が、あらためて論点になる
アンフィールドという名前は1884年から使われています。命名権は売られていません。
前に書いたとおり、歴史のあるクラブほど命名権を使えません。100年以上使われた名前を売れば猛反発が起きるからです。ニューカッスルは過去に一度試みて、ファンの反発で撤回しています。
しかし新しいオーナーにとって、これは手つかずの収入源に見えます。トッテナムは年£25mでの命名権契約を目指しているとされます。
分母を増やす手段として、いつか必ず検討される論点です。 そのとき何が起きるかは、ニューカッスルの前例が示しています。
まとめ
| 変わること | 理由 | |
|---|---|---|
| 1 | 移籍予算は増えない | オーナーの資金はSCRの分母に入らない |
| 2 | APTの審査対象になる | オーナー関連企業との取引は市場価値で評価 |
| 3 | 株主ローンの扱いが問われる | 無利子貸付は実質的な補助。SSRにも影響 |
| 4 | スタジアム投資は自由になる | 建設費はSCRの分子に入らない |
| 5 | 命名権が論点になる | 手つかずの分母。ただし反発は必至 |
移籍市場には効かず、建物には効く。 これが新しいルールの下でオーナーの資金が持つ意味です。
「大金持ちが来たから大型補強」という筋書きは、2026/27以降は成り立ちません。
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出典
- Premier League「New Premier League financial system explained」 https://www.premierleague.com/en/news/4467022/new-premier-league-financial-system-explained
- Sportico「Bezos, Bhatia, Saverin Buy Liverpool Stake at $7 Billion Valuation」 https://www.sportico.com/business/team-sales/2026/jeff-bezos-liverpool-stake-bhatia-saverin-1234941903/
- Deadline「Amazon Fails To Renew Live UK Premier League Rights As Sky & TNT Maintain Grip On Games」 https://deadline.com/2023/12/premier-league-tv-rights-amazon-sky-tnt-1235650921/
- Brabners「Out With PSR, In With SCR」 https://www.brabners.com/insights/sport/out-with-psr-in-with-scr-key-takeaways-for-the-premier-leagues-new-financial-era
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。選択権が行使されるかは決まっておらず、本記事は仮定に基づく整理です。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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