チャンピオンシップのプレーオフ決勝が£200mを超える理由 — 世界でいちばん高い90分
〜世界でいちばん高い90分〜£200m昇格プレーオフ決勝の「価値」は、その試合の賞金ではありません。昇格後の分配金など、将来の増収を合計した推計です。
残留できるかによって受取額と期間が変わります。増収の見込みから、人件費や補強費を引いた利益まで保証されるわけではありません。
1. いくら動くのか
2025年の決勝の勝者が得た追加収入は、少なくとも£220mと見積もられました。前年の£140mから大きく増えています。
さらに、2025/26シーズンから始まった新しい国内放映権契約(4シーズンで£6.7bn)を反映した最近の試算では、プレミアリーグに1シーズン残留した場合の総額は£290m規模とされています。
なぜここまで膨らむのか。理由は3層あります。
- プレミアリーグの中央配分(最低でも年£100m超)
- 翌年以降の分(残留すればもう1年、同じ額が入る)
- 降格してもパラシュートペイメント(3年で約£107m)
つまり、勝てば最低でも「£100m+パラシュート£107m」が確定します。負ければ、そのどれも入りません。
2. 象徴的な例
ルートン・タウンの2023年のプレーオフ制覇は、昇格とパラシュートの周期を合わせて約£290mの価値があったと試算されています。
このクラブは、プレミアリーグに1シーズンしかいられませんでした。それでも£290m。90分の結果が、クラブの10年を変えた計算になります。
3. 上と下の断絶
もう一つ、この試合の異常さを示す事実があります。
プレミアリーグで最下位に終わったクラブのほうが、チャンピオンシップで優勝したクラブより多く受け取ります。
前回書いたとおり、2024/25シーズンに最下位だったサウサンプトンの中央配分は£109.2m。2部で優勝しても、この額には遠く及びません。
昇格は「1つ上のリーグに行くこと」ではありません。まったく別の経済圏に移動することです。プレーオフ決勝が異様な緊張感に包まれるのは、選手たちがそれを知っているからです。
4. 財務ルールから見ると
2026/27シーズンから始まるSCRの式で考えると、昇格の意味がさらにはっきりします。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
ここでの85%は国内SCRのグリーン基準です。分母は規則上の調整後の値で、国内のシーズン中の判定では事前合意した収益等を使います。欧州大会の対象クラブは、定義・期間の異なるUEFAの70%も別に確認します。費用枠の増加は、同額の移籍金を使えるという意味ではありません。公式説明。
昇格すると、分母が一気に跳ね上がります。中央配分だけで£100m以上が加わるので、使える上限が数倍になる。逆に、この昇格を逃したクラブは、翌年も同じ小さな分母で戦うことになります。
そして残酷なのは、昇格を狙って給与を上げた分は、失敗しても残ることです。分子だけが膨らんだ状態で1年を過ごす。プレーオフに敗れたクラブが翌シーズンに崩れることが多いのは、精神論だけの話ではありません。
5. 1試合の価値
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 昇格クラブの増収(Deloitte試算) | £205m以上 |
| 一部の試算 | £220m超 |
| 昇格クラブが受け取る中央配分の下限 | 年£100m超 |
| 新しい国内放映権契約(4シーズン) | £6.7bn |
出典: Sportico
1試合で£200m規模が動きます。世界で最も高額な1試合と呼ばれる理由です。
6. 読むときに確認したいこと
5月末のプレーオフ決勝を見るときは、こう考えてみてください。
- この試合で動く金額は、日本のJ1クラブの年間収入の数十倍
- 勝者は最低でも2年分の収入が確定する(残留できなくてもパラシュートがある)
- 敗者は上げた給与だけが残る
たった1試合です。それでも、この試合ほど「お金の話」がむき出しになる90分は、他にありません。
関連記事
出典
- BBC Sport「How much are the EFL play-off finals worth?」
- Sportico「EFL Championship Final Worth $490M If Winner Stays in Premier League」
- Goal「Championship play-off final: How much is Premier League promotion decider worth?」
- Premier League「Premier League central payments to clubs 2024/25 season」
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。金額は執筆時点で確認できた公表値・試算値です。
*