稼いだ£100のうち£65が給料に消える — プレミアリーグの給与総額が£4.4bnに達した

〜稼いだ£100のうち£65が給料に消える〜£100
サッカー財務給与

プレミアリーグの給与負担を見るときは、総額だけでなく収益に対する割合と対象者を確認します。全従業員の給与比率は、正式なSCRとは別の数字です。

本文は2024/25の集計値を扱います。給与、償却、現金支払いを分け、給与比率だけで補強余力や規則違反を判断しない読み方を示します。

1. 2024/25シーズンの数字

プレミアリーグが公表している数字と、各クラブの決算から見ていきます。

デロイトの年次レポートから、確認できた数字を並べます(数値は Deloitte「Annual Review of Football Finance: Premier League Clubs」 の記載を直接確認したものです)。

項目2024/25前年
20クラブの給与総額£4.4bn(過去最高)£4.0bn台
前年からの増加+£381m—
収入に対する給与比率65%64%
総収入£6.78bn(+6.8%)£6.35bn
営業黒字のクラブ数8クラブ13クラブ
税引前損失(合計)£948m£135m

(税引前損失については、別の分析では£785mとする集計もあります。どの費用を含めるかの定義で差が出るため、本記事では£948mを採りつつ、幅があることを明記しておきます)

一番目を引くのは、最後の行です。税引前損失が£135mから£948mへ、7倍に膨らんでいます。収入は過去最高なのに、赤字も過去最悪。この矛盾が、いま起きていることの全部です。

2. 「65%」をどう読むか

この65%という数字が、プレミアリーグの中でどれくらい重い意味を持つのかを考えます。

収入£100に対して給与£65。残りは£35です。

この£35から、移籍金の償却費、代理人手数料、スタジアムの維持費、スタッフの人件費、遠征費、その他すべてを払います。営業黒字のクラブが20のうち8しかない理由は、この時点で見えてきます。

そしてこの65%という数字は、SCRを考える手がかりになりますが、そのまま基準と比較はできません。

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

ここでの85%は国内SCRのグリーン基準です。分母は規則上の調整後の値で、国内のシーズン中の判定では事前合意した収益等を使います。欧州大会の対象クラブは、定義・期間の異なるUEFAの70%も別に確認します。費用枠の増加は、同額の移籍金を使えるという意味ではありません。公式説明。

分子は選手・ヘッドコーチの給与、償却・減損、代理人手数料です。全従業員の給与÷Revenueとは分子も分母も違うので、85%から65%を引いて「残り20ポイント」とは計算できません。

平均で65%ということは、それを超えているクラブが相当数あるということでもあります。

3. なぜ給与は下がらないのか

構造的な理由が3つあります。

1. 契約は途中で切れない
移籍金は「買わない」という選択ができます。しかし既存の契約は、成績が落ちても、選手が試合に出られなくても、満了まで払い続けなければなりません。給与は固定費です。

2. 下げると弱くなる
給与を下げれば選手の質が落ち、順位が下がり、収入(分母)が減ります。節約が翌年の首を絞めるという循環に入ります。

3. 相場は他クラブが決める
1クラブが自制しても、他が上げれば選手はそちらへ行きます。20クラブ全員が同時に自制しない限り、止まりません。これは経済学でいう「囚人のジレンマ」そのものです。

SCRという上限規制が導入されるのは、この止まらなさを外から止めるためです。自主的には止まらないと、当事者たちが認めているに等しい。

4. それでも収入は伸びている

悲観的な話が続きましたが、収入側も過去最高を更新しています。£6.35bn → £6.78bn、+6.8%。

問題は、その伸び(+£430m相当)を、給与の伸び(+£381m)がほぼ食い尽くしていることです。増えた分は、ほぼそのまま選手に渡っている。

放映権料が増えれば選手の給与も上がる。この連動が続く限り、クラブの手元には何も残りません。


5. 読むときに確認したいこと

決算のニュースを読むときは、この3つを見てください。

  • 給与÷収入(対象年度・人件費の範囲を確認。70%超だけで違反や売却の必要性は判断できません)
  • 営業損益(決算の表示と定義を確認。税引前損益から売却益を引いただけの値とは異なります)
  • 税引前損失(売却益も含めた最終的な数字。ここが黒字でも、選手を売って作った黒字かもしれません)

「£100mの補強」より、この3つの数字のほうが、そのクラブの来年を正確に予言します。

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出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。数値は執筆時点で確認できた公表値です。

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