リヴァプールの株式売却、その後 — 公式発表に金額は1つも書かれていない
〜公式発表に金額はない〜$6bnリヴァプールの株式売却、その後。8月14日のリヴァプール株式売却について、クラブの公式発表には出資比率も評価額も一切ありません。報じられている$6bn〜$7.1bnという数字は、すべて報道側のものです。誰が買ったのか、そして12か月以内の選択権とは何かを整理します。
2026年8月14日のリヴァプール株式売却について、続報が出そろいました。
先に前回の記事で、この£1,650mによって移籍市場で使える額は1ポンドも増えないと書きました。今回はその先、誰が買ったのかと次に何が起きうるのかを整理します。
まず、公式発表に何が書いてあるか
クラブの公式発表を読むと、驚くことがあります。
出資比率も、評価額も、金額も、1つも書かれていません。
書かれているのは、誰が投資したかと、FSGが過半数の保有と運営の主導権を維持することだけです(Liverpool FC)。
そして「規制当局の承認などを条件に完了する」とあります。まだ完了していません。
つまり、いま報じられている数字はすべて報道側のものです。クラブが認めた金額ではありません。
報じられている評価額は、ばらついている
ここが今日いちばん面白い部分です。同じ取引について、媒体ごとに違う数字が出ています。
| 出どころ | 評価額 |
|---|---|
| ブルームバーグ | $6bn |
| フォーブス(2026年5月時点の評価) | $6.2bn |
| スポルティコ、CNBC | $7.1bn |
| 英メディアの報道 | £5bn〜£6bn |
| 12か月以内の選択権(後述) | $8bn |
$6bnと$7.1bnでは、$1.1bn(約1,700億円)の開きがあります。
なぜ差が出るのか。前に「同じクラブの決算なのに、数字が3つある」で書いたのと同じ構造です。
- どの会社を評価しているか(クラブ単体か、関連事業を含むか)
- 借入を含めた企業価値か、株式だけの価値か
- 取引額から逆算した値か、独自の査定か
フォーブスの$6.2bnは、この取引とは無関係に2026年5月時点で独自に算定した額です。取引から逆算した$7.1bnとは、そもそも計算しているものが違います。
どの数字が正しいかではなく、それぞれ何を測っているかを見るべき場面です。
買ったのは誰か
公式発表に書かれている投資家は4者です。
| 投資家 | 内容 |
|---|---|
| アミット・バティア(個人) | 英国の実業家。この件を主導し、副会長に就任 |
| ミッタル家のトラスト | 鉄鋼王ラクシュミー・ミッタルの一族。バティアはその娘婿 |
| K5 Sports | ジェフ・ベゾスが筆頭投資家。$1bn超を拠出したと報じられる |
| EE Capital | エドゥアルド・サベリン(フェイスブック共同創業者)夫妻のファミリーオフィス |
出典: Liverpool FC、Sportico
投資主体の名前は1892 Holdings。リヴァプールが創設された年から取られています。
報道で名前が先に出るのはベゾスですが、主導しているのはバティアです。ベゾスはK5の筆頭投資家という立場で、取締役会には入らない見込みと報じられています。副会長として名前が入るのはバティアのほうです。
バティアはクイーンズ・パーク・レンジャーズの元会長で、プレミアリーグのクラブ経営の経験があります。
本当のニュースは、12か月以内の選択権
ここが最も重要です。
投資グループには、今後12か月以内に、およそ$8bnの評価額で過半数株主になる選択権が付いている。
出典: Sportico
今回の30%は、買収の第一段階である可能性があるということです。
FSGは現時点で過半数と運営の主導権を保っています。しかし1年以内に、構図が変わる余地が契約に書き込まれている。
「マイノリティ出資」という言葉から受ける印象より、はるかに重い取り決めです。
FSGにとっての意味
FSGは2010年に£300mでリヴァプールを買いました。
今回の評価額を当てはめると、14倍を超える計算になります。
| 金額 | |
|---|---|
| 2010年の取得額 | £300m |
| 現在の評価額(報道ベース) | $6bn〜$7.1bn |
| 倍率 | 14倍超 |
16年で14倍。サッカークラブが投資対象として成立したことを示す数字です。
なお前に書いたとおり、リヴァプールの2024/25の収益は£703mでリーグ最高、税引後は£8mの黒字でした。評価額は、この収益の8倍前後にあたります。
それでも、使える額は増えない
前回の記事の結論は変わりません。
2026/27から始まるSCRの式は、こうです。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
分母は「調整後収益」であって、「オーナーが入れた金」ではありません。 $7bnの評価がつこうと、$1bnが振り込まれようと、分母は1ポンドも動きません。
£1,650mでできるのは、借入の返済、スタジアムや練習場への投資、赤字の穴埋めまで。選手の給与に回せる枠は広がりません。
さらにリヴァプールはCLに出るため、実質の縛りはプレミアの85%ではなくUEFAの70%です。
見るときのポイント
- 公式発表に金額はない。報じられている数字は報道側のもの
- $6bnと$7.1bnは、測っているものが違う。どちらが正しいかという問いは成立しにくい
- 主導しているのはバティア。ベゾスは筆頭投資家だが取締役会には入らない見込み
- 本当のニュースは、12か月以内・$8bnでの過半数取得の選択権
- そして使える移籍予算は、これでも増えない
次に見るべきは、規制当局の承認が下りるかと、12か月以内に選択権が行使されるかの2点です。
関連記事
出典
- Liverpool FC「FSG announces strategic minority investment in Liverpool FC」 https://www.liverpoolfc.com/news/fsg-announces-strategic-minority-investment-liverpool-fc
- Sportico「Bezos, Bhatia, Saverin Buy Liverpool Stake at $7 Billion Valuation」 https://www.sportico.com/business/team-sales/2026/jeff-bezos-liverpool-stake-bhatia-saverin-1234941903/
- CNBC「Group including Jeff Bezos buys minority stake in Liverpool FC, with option to become controlling owner」 https://www.cnbc.com/2026/08/14/jeff-bezos-group-buys-stake-liverpool-fc.html
- Bloomberg「Jeff Bezos-Led Group Buys Minority Stake in Liverpool FC」 https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-08-14/liverpool-fc-sells-stake-of-roughly-30-to-jeff-bezos-consortium
- Sky Sports「Explained: Why Fenway Sports Group have sold minority stake in Liverpool to Jeff Bezos consortium」 https://www.skysports.com/football/video/30998/13573051/explained-why-fenway-sports-group-have-sold-minority-stake-in-liverpool-to-jeff-bezos-consortium
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。取引は本記事の執筆時点で完了しておらず、規制当局の承認などを条件としています。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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