プレミアリーグ20クラブのオーナー一覧 2026/27 — 米国資本が10、英国資本は4
〜オーナーの金は分母に入らない〜No.71プレミアリーグ20クラブのオーナーを一覧にしました。国家系・投資ファンド・実業家・スポーツグループの4類型に分け、米国資本が何クラブまで来ているかを数えます。そして多重保有の規制で2026/27に実際に起きたことと、オーナーのお金がSCRの分母に入らない話まで。
「あのクラブは金持ちのオーナーがついたから強くなる」
よく見る言い方ですが、2026/27のルールでは、これは半分しか当たっていません。オーナーがいくら入れても、使える額の上限はほとんど動かないからです。
まず20クラブを並べて、そのあとで理由を書きます。
20クラブのオーナー
一覧
| クラブ | オーナー | 拠点 |
|---|---|---|
| リヴァプール | FSG(過半数)/1892 Holdings(約30%) | 米国 |
| マンチェスター・ユナイテッド | グレイザー家/INEOS(ラトクリフ、27.7%) | 米国・英国 |
| アーセナル | スタン・クロエンケ(100%) | 米国 |
| マンチェスター・シティ | シティ・フットボール・グループ | UAE |
| チェルシー | BlueCo(ボーリー/クリアレイク) | 米国 |
| トッテナム | ENIC Sports(86.6%) | 英国 |
| ニューカッスル | サウジアラビア公的投資基金(PIF、85%) | サウジ |
| アストン・ヴィラ | V Sports(サウィリス、エデンズ、Atairos) | エジプト・米国 |
| エヴァートン | フリードキン・グループ | 米国 |
| ブライトン | トニー・ブルーム | 英国 |
| ノッティンガム・フォレスト | エヴァンゲロス・マリナキス | ギリシャ |
| ブレントフォード | マシュー・ベンハム | 英国 |
| クリスタル・パレス | ウッディ・ジョンソン(43%)/スティーヴ・パリッシュほか | 米国・英国 |
| フラム | シャヒド・カーンとカーン家 | 米国 |
| ボーンマス | ブラック・ナイト(ビル・フォーリー) | 米国 |
| サンダーランド | キリル・ルイ=ドレフュス | フランス |
| リーズ・ユナイテッド | 49ers Enterprises | 米国 |
| コヴェントリー・シティ | ダグ・キング | 英国 |
| ハル・シティ | アジュン・ウルジャル | トルコ |
| イプスウィッチ・タウン | Gamechanger 20 Ltd(ORG/Bright Path) | 米国 |
各クラブの詳しい持分と出典は財務データベースに入れてあります。
4つの類型に分かれる
並べてみると、性格の違うお金が4種類あることが分かります。分類は本サイトによるものです。
| 類型 | クラブ | 特徴 |
|---|---|---|
| 国家系 | マンチェスター・シティ、ニューカッスル | 資金量に事実上の上限がない。だから規制が作られた |
| 投資ファンド | チェルシー、リーズ、イプスウィッチ、ボーンマス | 出口(売却)を前提に持つ。期限がある |
| 実業家個人 | アーセナル、ブライトン、ブレントフォード、フラム、コヴェントリー、ハル、フォレスト、サンダーランド | 判断が速い。ただし本人の事情に左右される |
| スポーツグループ | リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、エヴァートン、クリスタル・パレス、アストン・ヴィラ | 他競技のチームも持つ。運営の型を持ち込む |
49ers Enterprises(リーズ)はNFLサンフランシスコ・49ersの投資部門、ウッディ・ジョンソン(クリスタル・パレス)はNFLニューヨーク・ジェッツのオーナー、フリードキン(エヴァートン)はセリエAのローマも持っています。
米国資本はどこまで来たか
数えると10クラブ
筆頭株主が米国系のクラブを数えます。
| 米国系(10) | 非・米国系(10) |
|---|---|
| リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、チェルシー、エヴァートン、フラム、ボーンマス、リーズ、イプスウィッチ、クリスタル・パレス | マンチェスター・シティ、ニューカッスル、トッテナム、ブライトン、ブレントフォード、コヴェントリー、フォレスト、サンダーランド、ハル、アストン・ヴィラ |
ちょうど半分です。 アストン・ヴィラは米国のウェス・エデンズとエジプトのナセフ・サウィリスの共同なので、数え方によっては11になります。
ビッグ6のうち4クラブ——リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、チェルシー——が米国資本です。
完全に英国資本なのは4クラブだけ
トッテナム、ブライトン、ブレントフォード、コヴェントリー。20分の4です。
イングランドのリーグでありながら、5分の1しか英国の持ち物ではないという状態になっています。
多重保有 — 2026/27に実際に起きたこと
ここが今季いちばん動いた論点です。
UEFAの第5条と、3月1日
UEFAの規則にはこう書かれています。
UEFAの大会に出るクラブは、同じ大会に出る他のクラブの株式を持ったり、その経営・運営・競技面に関与したりしてはならない
判定の基準日は3月1日。その時点で条件を満たしていないと、大会から外される可能性があります。締切があるので、オーナーは動かざるを得ません。
そして実際に3クラブが動きました。
フォレスト:株を信託に預けた
マリナキスはギリシャのオリンピアコスも持っています。両方が同じ大会に出ると、第5条に引っかかる。
そこでマリナキスは、フォレストの株をブラインド・トラスト(自分では動かせない信託)に移しました。Companies Houseの届出上、彼は「支配的な影響力を持つ者ではなくなる」という扱いになっています(ESPN)。
オーナーであることをやめたわけではありません。書類の上で手を離したという形です。
クリスタル・パレス:持分を売って解決した
ジョン・テクスターはフランスのリヨンも持っていました。パレスとリヨンが同じヨーロッパリーグに進みそうになり、同じ問題が起きます。
こちらは信託ではなく、売却で解決しました。2025年7月、ウッディ・ジョンソンがテクスターの持分を£190mで取得しています(ESPN)。
ヨーロッパに出る権利のために、オーナーが代わったわけです。
エヴァートン:まだ二択が残っている
フリードキン・グループはエヴァートンとローマの両方を持っています。両方が同じ大会に出た場合、どちらかを信託に預ける必要が出てきます。
2024年12月にモシリの94.1%を取得したばかりで(Sky Sports)、この宿題は残ったままです。
なお、リーズの49ers Enterprisesも2025年にレンジャーズの過半数を取得しています。同じ話がいつ起きてもおかしくない構図です。
財務から見ると — オーナーの金は分母に入らない
SCRの分母に入るもの、入らないもの
ここが本題です。2026/27から始まったSCR(スカッドコスト比率)は、こういう割り算でした。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
分母に入るのは、サッカーに関する収益と、選手売却の純損益です。詳しくはSCRとSSRの完全解説に書きました。
オーナーがポケットから出したお金は、ここに入りません。 増資も、無利子の貸付も、収益ではないからです。
チェルシーの£1,100m
実例があります。
チェルシーのオーナーは、3シーズンで£1,100mの無利子出資を入れています(Sports Illustrated)。借入£225mとは別枠の、返さなくてよいお金です。
それでもチェルシーのSCRは、本サイトの概算で116%。レッド・スレッショルド115%を超える水準です。UEFAからは2025年のクラブモニタリングで€3mの罰金を受けています。
£1,100m入れても、比率は1ポイントも下がりませんでした。 分母に入らないお金だからです。
くわしい分解はSCRを改善するために効くこと ベスト5に書きました。効くのは収入であって、オーナーの財布ではありません。
だからAPTルールがある
ではオーナーは何もできないのか、というとそうではありません。自分の関連会社にスポンサーになってもらえば、それは収益として分母に入ります。
ここに蓋をしたのがAPTルールです。オーナーの関連企業との取引は、適正な市場価格まで引き下げて計上させる。相場より高い契約で分母を膨らませることを止める仕組みです(→APTルールとは)。
このルールが作られた直接のきっかけが、ニューカッスルのPIFによる買収でした。財務データベースにもそう書いてあります。
つまり現行のルールは、オーナーの資金力が直接は効かないように、二重に設計されています。
覚えておくと効くこと
- 20クラブのうち米国系が10(数え方により11)。完全な英国資本は4クラブだけ
- ビッグ6のうち4クラブが米国資本
- 多重保有はUEFA第5条の対象。判定は3月1日、破れば大会から外れる
- 2026/27ではフォレストが信託へ、パレスは持分を£190mで売却して回避した。エヴァートンはローマとの宿題が残っている
- オーナーが入れたお金は、SCRの分母に入らない。チェルシーは£1,100m入れて比率116%
- 分母に入れたいなら関連会社のスポンサー契約だが、APTで適正価格まで引き下げられる
「金持ちオーナーが来た」というニュースを見たら、その人がクラブに何を持ってくるのかを見てください。現金そのものは、もう昔ほど効きません。
関連記事
- プレミアリーグの新しい財務ルール、SCRとSSRの完全解説
- SCRを改善するために効くこと ベスト5
- APTルールとは — オーナー関連企業の取引を縛る規制
- リヴァプールの株式売却で£1,650m
- サッカークラブの価値はどう決まるか
出典
- UEFA「Regulations of the UEFA Champions League 2026/27 — Article 5 多重保有」(公式規則) https://documents.uefa.com/r/Regulations-of-the-UEFA-Champions-League-2026/27/Article-5-Integrity-of-the-competition/multi-club-ownership-Online
- Premier League「New Premier League financial system explained」(SCRの分子・分母の定義) https://www.premierleague.com/en/news/4467022/new-premier-league-financial-system-explained
- Liverpool FC「FSG announces strategic minority investment in Liverpool FC」(クラブ公式) https://www.liverpoolfc.com/news/fsg-announces-strategic-minority-investment-liverpool-fc
- ESPN「Nottingham Forest owner Marinakis steps back from duties」(ブラインド・トラスト) https://www.espn.com/soccer/story/_/id/44932614/nottingham-forest-owner-evangelos-marinakis-steps-back-duties
- ESPN「Jets owner Johnson completes purchase of stake in Crystal Palace」(£190mでの取得) https://www.espn.com/soccer/story/_/id/45813769/jets-owner-johnson-completes-purchase-stake-crystal-palace
- Sky Sports「Everton takeover: The Friedkin Group complete deal」 https://www.skysports.com/football/news/11095/13275439/everton-takeover-the-friedkin-group-complete-deal-to-become-clubs-new-owners
- SportsPro「Jim Ratcliffe completes US$1.65bn deal for Manchester United stake」 https://www.sportspro.com/news/jim-ratcliffe-manchester-united-deal-minority-stake-finalised-premier-league-ineos/
- Sports Illustrated「Four Worrying Takeaways From Chelsea's 2024–25 Financial Accounts」(オーナーからの£1,100m) https://www.si.com/soccer/four-worrying-takeaways-from-chelsea-s-2024-25-financial-accounts
- GiveMeSport「Every Premier League Club's Owners」(各クラブのオーナー) https://www.givemesport.com/every-premier-league-club-owner-football/
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体・オーナーとも関係はありません。オーナーの4類型と出身地の分類は本サイトによるものです。米国系10クラブという数え方は「筆頭株主が米国系かどうか」を基準にしており、アストン・ヴィラのように共同保有のクラブは数え方によって変わります。チェルシーのSCR比率116%は筆者による概算です。持分比率は変動します。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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