プレミアリーグの勝ち点剥奪はどう決まるのか — 裁定文書を計算式まで読む
〜出発点は3点。そこから足し引きする〜No.64プレミアリーグの勝ち点剥奪はどう決まるのか。エヴァートンとノッティンガム・フォレストの実例をもとに、独立委員会の裁定文書から「3点+超過分」という計算式と、減算のしくみを読み解きます。
このサイトでは財務ルールをいくつも扱ってきました。PSR、SCR、SSR、APT。
しかし破ったらどうなるかを、正面から書いたことがありませんでした。
答えは罰金ではありません。勝ち点が引かれます。 プレミアリーグの勝ち点剥奪には、きちんとした計算式がありました。
実際に引かれた3件
| クラブ | 対象年度 | 剥奪 | 超過額 |
|---|---|---|---|
| エヴァートン | 2021/22まで | 10点 → 6点(不服申立で減) | — |
| エヴァートン | 2022/23まで | 2点 | £16.6m |
| ノッティンガム・フォレスト | 2022/23まで | 4点 | £34.5m |
出典: Premier League公式声明、同(フォレスト)
PSRの上限は3年で£105mですが、フォレストは2部にいた年があるため、適用された上限は£61mでした。
計算式が、裁定文書に書いてある
ここからが本題です。エヴァートンの2件目について、独立委員会の裁定文書が公開されています。点数の決め方が、そのまま書かれていました。
原文を訳すと、こうです。
2.1 PSR違反はいずれも重大であり、3点の減点を正当化する。むしろ必要とする。
2.2 エヴァートンの違反額——上限を約£16.6m、15.8%上回った——を反映して、さらに2点を加える。加重・減軽を考慮する前の出発点は、したがって5点である。
出典: Premier League v Everton FC 裁定文書(公式PDF)
整理すると、こうなります。
| 段階 | 点数 |
|---|---|
| 違反したこと自体 | 3点 |
| 超過額に応じた加算 | +2点 |
| 出発点 | 5点 |
「違反すれば最低3点」が土台で、超えた金額の大きさに応じて上乗せされます。
そこから、3点が引かれた
出発点は5点でした。しかし実際の処分は2点です。3点が減算されています。
裁定文書には、その内訳も書かれています。
| 減算の理由 | 点数 |
|---|---|
| 同じ年度が、前回の処分と重なっていた(二重処罰の回避) | −2点 |
| USMからのスポンサー収入を失ったこと | 合わせて−1点 |
| 最初の機会に違反を認めたこと | 同上 |
一方で、認められなかった主張もあります。裁定文書はこう書いています。
エヴァートンが主張したその他の減軽事由は、プロサッカークラブにとって通常起こりうる変動、またはエヴァートン自身の商業的判断の結果を反映したものにすぎない。
「経営が苦しかった」は理由にならない、ということです。自分で決めたことの結果は、自分で引き受ける。
なぜ罰金ではないのか
裁定文書は、処分の目的も述べています。
処分は、すべてのクラブによる共同事業としてのプレミアリーグという、より広い文脈におけるPSRの目的を反映しなければならない。処分はPSRの完全性を保たなければならず、プレミアリーグに対する社会の信頼も確保しなければならない。
「共同事業」という言葉が鍵です。
放映権収入は20クラブでまとめて売り、分配しています。1クラブが上限を超えて使えば、その分だけ他の19クラブが不利になる。だから罰金では意味がありません。使いすぎて得た優位を、順位で取り返す必要があります。
フォレストの4点は、どう決まったか
同じ式を当てはめると、フォレストの数字も読めます。
| エヴァートン | フォレスト | |
|---|---|---|
| 超過額 | £16.6m | £34.5m |
| 上限に対する超過率 | 15.8% | 約57% |
| 最終的な処分 | 2点 | 4点 |
超過額はエヴァートンの約2倍、処分も2倍です。フォレストは不服申立をしましたが、独立審判所が4点を支持しています(Premier League公式)。
SCRになったら、どうなるか
2026/27シーズンから、判定基準はSCR(スカッドコスト比率)に変わります。
PSRが「3年の損失合計」を見ていたのに対し、SCRは「スカッドコスト ÷ 収益」という比率を見ます。測るものが変わります。
ただし処分の考え方が変わったという発表はありません。上限を超えれば、勝ち点で払う。この枠組みは残ると見るのが自然です。
前に書いたUEFAの70%では、違反した9クラブに罰金が科されました。リーグは勝ち点、UEFAは罰金と大会からの制限。同じ違反でも、罰し方が違います。
ここだけ持ち帰ってください
- 違反すれば、最低3点が出発点
- 超過額の大きさで上乗せされる(£16.6mで+2点)
- 減算はあるが、「経営が苦しかった」は認められない
- 罰金ではなく勝ち点なのは、リーグが共同事業だから
- 勝ち点剥奪の中身は、裁定文書が公開されているので誰でも読める
「PSR違反で勝ち点剥奪」というニュースを読んだら、超過額を探してください。 そこから点数がだいたい逆算できます。
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出典
- Premier League「Premier League v Everton FC(独立委員会の裁定文書・公式PDF)」 https://resources.premierleague.com/premierleague/document/2024/04/08/eef5f482-4d3a-473a-9e38-26f995059377/Premier-League-v-Everton-Decision-FY23.pdf
- Premier League「Everton FC deducted two points by independent Commission」(公式声明) https://www.premierleague.com/en/news/3960088
- Premier League「Nottingham Forest FC deducted four points by independent Commission」(公式声明) https://www.premierleague.com/en/news/3936397
- Premier League「Independent Appeal Board decision on Nottingham Forest」(公式声明) https://www.premierleague.com/en/news/3999776
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。裁定文書の引用は筆者が訳出したもので、正確な内容は原文をご確認ください。
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