UEFAの70%に違反した9クラブ — うち4つがプレミアリーグ

〜罰は85%より先に、70%で来る〜70%
サッカー財務ルール欧州大会

UEFAの70%とプレミアリーグの85%は、対象期間や費用・収益の定義が異なります。同じ概算比率に2つの基準を当てて違反を判断することはできません。

制裁の発表で確認できる事実と、ルールの一般的な仕組みを分けます。公表されていないクラブの比率を、全従業員の人件費から断定しません。

1. 罰金を受けた9クラブ

クラブ国
アストン・ヴィライングランド
チェルシーイングランド
ニューカッスル・ユナイテッドイングランド
ノッティンガム・フォレストイングランド
OGCニースフランス
RCストラスブールフランス
AEKアテネギリシャ
ACFフィオレンティーナイタリア
フェネルバフチェトルコ

9クラブのうち4つがプレミアリーグです(UEFA、Lagom Sports Compliance)。

罰金は超過した比率と、超過額の大きさに比例して決まります。チェルシーは€3mで、うち€2mは2026年に比率を下げ続けることを条件とした猶予分とされています。

2. 70%になるまでの経緯

UEFAの上限は、いきなり70%になったわけではありません。段階的に下げられてきました。

シーズン上限
2023/2490%
2024/2580%
2025/26以降70%(恒久)
902023/24802024/25702025/26〜
UEFAスカッドコスト上限の推移(%)

3年かけて20ポイント下げたうえでの、今回の適用です。クラブには準備期間がありました。それでも9クラブが超えています。

3. 規則には、こう書いてある

「70%」は報道用の要約ではありません。UEFAの規則にそのまま書かれた数字です。

規則の要旨(計算は第93条、上限は第94条) — ライセンス対象クラブのスカッドコスト比率は、定められた上限である70%を超えてはならない。

出典: UEFA Club Licensing and Financial Sustainability Regulations(規則原文)

計算方法も第92条に定義されています。プレミアリーグのSCRと似ていますが、同じではありません。

中身
分子①対象者の人件費 ②対象者の取得原価の償却・減損 ③代理人・仲介者・関連当事者への費用(①②に含まれない場合)
分母④調整後営業収益 ⑤選手登録の売却損益、その他の移籍収支

ここで注意すべきは「対象者(relevant persons)」の範囲です。規則は、単に在籍中の選手だけでなく——

  • 期中に一度でも登録されていた男子プロ選手
  • 他クラブへ期限付き移籍させている選手
  • その期間に人件費が発生した選手

——までを含めると定めています。レンタルに出しても、給与を負担していれば分子から消えません。

集計する期間も違う

もう1つ、見落とされやすい点があります。分子①〜④はライセンス年度の12月31日までの12か月、選手売却損益(⑤)は同じ12月31日までの36か月で計算します。

つまり選手売却益は3年分をならして評価される。1年だけ大量に売って比率を良く見せる、という手が効きにくい設計です。

4. プレミアの85%とUEFAの70%

2026/27から、欧州大会に出るプレミアのクラブは2つの規制を同時に受けます。

プレミアリーグUEFA
上限グリーン85%(レッド初期値115%、許容枠により変動)70%
対象全20クラブ欧州大会に出るクラブ
分子選手・監督の給与、償却、代理人手数料選手・コーチの給与、移籍金、代理人手数料

国内SCRとUEFAの双方を、それぞれの定義と対象期間で計算します。 70%の方が低いからといって、同じ比率を使って比較できるわけではありません。

リヴァプールの参考比率約77.5%は、対象者・収益調整・期間がUEFAのSCRと異なるため、70%との比較から違反は判断できません。現在の追加補強の条件はリバプールのSCRと補強予算で整理しています。

5. 罰は罰金だけではない

UEFAの制裁は、金銭だけではありません。

  • 罰金
  • UEFAの大会の登録リストAに、新しい選手を登録できない制限
  • 繰り返しや重大な違反の場合は、大会からの除外

「登録できない」というのは、買っても使えないということです。移籍金を払ってもUEFAの大会には出せない。予算があっても補強が意味をなさなくなる制裁です。

6. 読むときに確認したいこと

  • 欧州大会に出るクラブは、国内85%とUEFA70%を別々に確認する
  • 上限は3年かけて90→80→70と下げられた。移行期間は終わっている
  • 罰は罰金だけでなく、選手登録の制限まである
  • 2025年の適用で、プレミアから4クラブが引っかかった

プレミアリーグの85%というニュースを見たら、そのクラブが欧州に出るかを確認してください。出る場合は、UEFA側の計算も必要です。


関連記事

出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。投資に関する助言を目的とするものではありません。

*

記事一覧にもどる