アーセナルの商業収入が19%増 — 分母を自力で伸ばす、唯一の手
〜分母を自力で伸ばした唯一の手〜£264.4mアーセナルの2024/25の商業収入は£264.4m、前年比19%増。新ルールの下で、クラブが自力で伸ばせる分母はここしかありません。損失を£1.4mまで圧縮した過程を追います。
アーセナルの2024/25シーズンの決算に、注目すべき数字が2つあります。
| 項目 | 2024/25 |
|---|---|
| 商業収入 | £264.4m(前年比19%増) |
| 移籍金の未払い残高(ネット) | £125m(前年の£229mから減少) |
出典: Sky Sports
19%増ということは、前年は約£222mだった計算になります(本サイトによる計算値)。1年で£42m積み増したことになります。
そして収益は£691m(前年から£75.2m増)、税引前は£1.4mの損失まで圧縮されました。
なぜ商業収入なのか
2026/27から始まるSCRの式です。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
比率を良くする方法は、2つしかありません。分子を減らすか、分母を増やすか。
分子を減らす——選手を売る、給与を下げる——は、戦力が落ちます。
では分母を増やすには何があるか。収益の柱を分けて見ます。
| 収益の柱 | クラブが自力で増やせるか |
|---|---|
| 放映権(中央配分) | できない。リーグが決める |
| メリットペイメント | 順位しだい。直接は動かせない |
| ファシリティフィー | 中継の回数しだい。動かせない |
| 欧州大会の賞金 | 出場と勝敗しだい。確実ではない |
| 試合日収入 | 箱の大きさで頭打ち |
| 商業収入 | 伸ばせる |
クラブが自分の意思で伸ばせるのは、実質的に商業収入だけです。
アーセナルはそこを19%伸ばしました。正攻法としては、これしかありません。
試合日収入との違い
前に書いたとおり、アーセナルの試合日収入は£154mでリーグ2位です。エミレーツ・スタジアムの収容は60,704人。
しかし試合日収入には天井があります。席の数は決まっていて、試合数も決まっている。増やすにはスタジアムを大きくするしかなく、それには数百億円と数年がかかります。
商業収入に、その制約はありません。スポンサー契約は、席を増やさなくても増やせます。
£1,650mより、£42mのほうが効く
ここが今日の要点です。
前にリヴァプールの株式売却について、£1,650mが動いても使える額は£0しか増えないと書きました。オーナーが入れた金は、SCRの分母に入らないからです。
一方、アーセナルが積み増した商業収入£42mは、そのまま分母に入ります。
85%の枠で考えると、分母が£42m増えれば、使える額は£35.7m(£42m × 85%)増えます。
| 分母への効果 | 使える額への効果 | |
|---|---|---|
| オーナーからの£1,650m | £0 | £0 |
| 商業収入の£42m増 | £42m | +£35.7m |
一度きりの£1,650mより、毎年続く£42mのほうが、移籍市場では強い。
しかも商業収入は翌年も入ります。1回の資本注入と違い、積み上がっていきます。
未払い残高を減らした意味
もう1つの数字、移籍金の未払い残高が£229mから£125mへ。
前に書いたとおり、移籍金は数年に分けて払います。未払い残高は、これから現金で出ていく約束です。
これを£104m減らしたということは、将来の現金の負担を軽くしたということ。SSRの流動性テストや運転資金テストは、まさにこの現金を見ます。
分母を増やし、将来の現金負担を減らす。 新ルールが求めていることを、そのままやっている形です。
見るときのポイント
- SCRの分母のうち、クラブが自力で伸ばせるのは商業収入だけ
- 試合日収入は箱の大きさで頭打ちになる
- 一度きりの資本注入より、毎年続く収益のほうが効く
- 移籍金の未払い残高を減らすと、SSRの側で効いてくる
「今年いくら使ったか」より、「来年の分母をいくら増やしたか」。新しいルールの下では、こちらが本当のニュースです。
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出典
- Sky Sports「Premier League club finances」 https://www.skysports.com/football/news/11095/13514540/premier-league-club-finances-what-have-we-learned-from-arsenal-chelsea-liverpool-man-utd-spurs-and-west-ham-accounts
- Premier League「New Premier League financial system explained」 https://www.premierleague.com/en/news/4467022/new-premier-league-financial-system-explained
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。前年の商業収入は公表された増加率からの計算値です。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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