バルコラ移籍の売却益を試算する — 保証額・出来高・簿価の違い

〜最大額を確定利益にしない〜No.67
サッカー財務移籍

バルコラ移籍を売り手のPSGから読むには、売却額と残存簿価の差を確認します。報道された最大額を、そのまま確定売却益にすることはできません。

本文は移籍報道時点の条件を使った計算です。保証額、出来高、売却費用を区別し、正式な会計処理やリヴァプールの補強余力とは分けます。

1. まず、報じられている中身

項目金額
総額£120m(約€140m)
うち保証£100m
うち出来高£20m
契約5年(2031年夏まで)

移籍金ランキングの記事でも書きましたが、報道の「£120m」は保証額ではありません。出来高が£20m含まれています。

出来高は、出場数やタイトルなどの条件を満たしたときにだけ払われます。条件を満たさなければ、£100mで終わる取引です。

同じ移籍が、媒体によって「£120m」とも「£100m」とも書かれる理由がここにあります。

2. PSGの帳簿から見る

いくらで買ったのか

ここが今回の肝です。

PSGは2023年夏、リヨンから約£40mでバルコラを獲得しました。

3年後に£120mで売ろうとしている。額面では3倍です。

ただし帳簿では、話がもう少し良くなります。

簿価を計算する

移籍金は契約年数で割って費用にします(償却)。PSGが5年契約で£40mを払ったとすると——

£40m ÷ 5年 = 年£8m

時点償却の累計簿価
2023年夏(獲得)—£40m
2024年夏£8m£32m
2025年夏£16m£24m
2026年夏(現在)£24m£16m

取得費£40m、5年償却、丸3年経過、追加費用や減損なしという仮定では、簿価は£16mです。実際の選手別簿価ではありません。

40獲得額16現在の簿価100売却額(保証)
PSGから見たバルコラ(£m)

売却益は£84m

売ったときの利益は「売値 − 簿価」で計算されます。

£100m(保証分) − £16m = £84m

出来高£20mがすべて入れば、£104mまで伸びます。

実際に認識できる売却対価と費用を確認する必要があります。 最大出来高が売却時点で全額利益になるとは限らず、SCRへの反映には別に年換算が必要です。

両側で保証額£100mを取得・売却対価として認識し、関連費用を除く例なら、買い手は5年償却で通年£20m、売り手は仮の簿価£16mとの差額£84mです。給与は別です。出来高£20mを認識する場合は、双方の計算を更新します。

同じ対価£100mを使った例計算
買い手の通年償却費£100m÷5=£20m
売り手の売却益(費用等を除く)£100m−仮の簿価£16m=£84m

なぜ売るのか

バルコラは23歳。普通に考えれば手放す年齢ではありません。

報じられている事情はこうです。

  • 契約は残り2年
  • 本人が延長を拒否している
  • 出場機会に不満を持っている

ここで契約が残り1年の選手の記事の話につながります。契約が減るほど、資産としての価値は下がる。

残り2年のいまが、PSGにとってまだ高く売れる最後の局面です。残り1年になれば足元を見られ、満了すればボスマン判決により£0になります。

この仮定での利益を得るか、保有を続ける価値を優先するか。 そう考えると、売る判断は自然に見えます。

3. リヴァプール側の事情

買う側も見ておきます。以下は直近の複数シーズンにまたがる大型獲得であり、すべて2026年夏の支出ではありません。

選手移籍金
アレクサンデル・イサク€145m
フロリアン・ヴィルツ€125m
ユーゴ・エキティケ€95m
バルコラ£120m(€140m)

BIG6の移籍金ランキングで見たとおり、リヴァプールのクラブ記録上位5件のうち3件が25/26シーズンです。そこにバルコラが加わります。

支えているのは収益です。株式売却の記事で確認したとおり、2024/25の収益は£703mでリーグ最高でした。

そして重要なのは、£1,650mの株式売却では使える額が増えない一方で、収益が増えれば増えるという点です。バルコラを買えるのは、株を売ったからではありません。

交渉が長引いた理由

この移籍は、まとまるまで時間がかかりました。報じられていた両者の希望額はこうです。

希望額
PSGの評価£145m
リヴァプールの上限£102.9m(€120m)
着地£120m(保証£100m+出来高£20m)

差は£42m。この溝を埋めたのが「出来高£20m」です。

保証を£100mに抑えれば、リヴァプールは希望額に近づく。出来高を積めば、PSGは「£120mで売った」と言える。両者の顔が立つ形になっています。

出来高が使われる理由が、この一件によく出ています。

8月31日の公式発表と金額の区別

8月31日、リバプールは国際移籍承認を条件とする獲得を公式発表しました。長期契約は確認できますが、この発表には移籍金と給与の開示はありません。クラブの獲得発表。

この記事の£100m+出来高£20mは、それ以前の報道を使ったモデルです。公式の確定額へ格上げせず、簿価と利益も筆者の計算として区別します。

4. 読むときに確認したいこと

  • 報じられる総額と保証額は別。今回は£120mと£100m
  • 売る側の利益は「売値 − 簿価」。この仮定ではPSG側は£84m(売却費用等を除く)
  • 買う側は年数で割る。この仮定ではリヴァプール側の償却は年£20m(給与等は別)
  • 契約が残り2年というのは、売り手が売却と延長を考える材料
  • 交渉が難航したら、出来高で差を埋める

「£120mで獲得」と読んだら、売った側がいくら儲けたかも考えてみてください。たいてい、そちらのほうが大きな数字です。


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出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。移籍金はクラブが公表していないため、掲載した金額はすべて報道にもとづく推計です。簿価および売却益は契約年数を5年と仮定した筆者の計算で、実際の会計処理とは異なります。

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