スポンサーの適正価格と実額のズレ — £21.4mの枠が£9mで売れている

〜適正価格と実額は一致しない〜£21.4m

スポンサーの適正価格と実額のズレ。リヴァプールの袖は適正価格£21.4mに対して実際の契約は£9m。逆にマンチェスター・ユナイテッドは適正£11mの枠を£20mで売っています。同じ市場で、なぜ2倍の開きが出るのか。APTルールとの関係まで。

サッカー財務スポンサールール

スポンサー契約には、「適正価格」という考え方があります。

その枠が市場でいくらの価値を持つか。露出量、視聴者数、クラブの成績などから第三者が算定した金額です。

そして実際の契約額は、その適正価格と一致しません

4クラブの袖スポンサー

クラブスポンサー実際の契約適正価格
リヴァプールExpedia£9m£21.4m適正より£12.4m安い
マンチェスター・UDXC Technology£20m£11m適正より£9m高い
アーセナルVisit Rwanda£10m£14.9m適正より£4.9m安い
チェルシーLive Nation非公表£13m

出典: The Sponsor

9リヴァプールの実額21.4リヴァプールの適正20マンUの実額11マンUの適正
袖スポンサーの実際の契約額と適正価格(£m)

同じリーグの、同じ袖という枠です。それでも実額と適正価格の関係が、クラブによって正反対になっています。

なぜズレるのか

理由は、いくつも考えられます。

1. 契約した時期が違う

スポンサー契約は複数年です。数年前に結んだ契約は、当時の相場で値段が決まっています。 その後クラブが強くなれば、適正価格だけが先に上がります。

リヴァプールは2024/25に収益£703mでリーグ最高、2025/26もCLに出続けています。契約を結んだ時点より、いまのほうが価値が高いという説明は成り立ちます。

2. 交渉力の差

長期契約と引き換えに単価を下げる、複数の枠をまとめて売る、といった条件がつくことがあります。枠単体の値段は、契約全体の一部でしかありません。

3. 買い手の事情

その企業がどれだけその枠を欲しがったか。競合が何社いたか。ここで値段は動きます。

適正価格が制度に組み込まれている

ここからが本題です。適正価格は、単なる目安ではありません。

前に書いたとおり、プレミアリーグにはAPTルール(関連当事者取引ルール)があります。

オーナーと関係の深い企業との取引は、公正な市場価値に引き直して評価する。

つまり、オーナー筋の企業が相場より高い金額でスポンサー契約を結んでも、SCRの分母に算入できるのは市場価値の分だけです。

2026/27から始まる式を確認します。

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

分母を水増しできないようにする仕組みが、この「公正な市場価値」です。

だから、この差は意味を持つ

もう一度、表を見てください。

マンチェスター・ユナイテッドは、適正£11mの枠を£20mで売っています。適正の1.8倍です。

もしこれがオーナー関連企業との契約なら、APTルールの審査対象になります。 DXC Technologyはグレイザー家ともINEOSとも関係のない独立した企業なので、この件は問題になりません。

しかし前に書いたとおり、マンチェスター・シティのエティハド航空との契約は事情が違います。エティハドはクラブの所有者と関係の深い企業です。同じ「相場より高い」でも、誰と結んだかで扱いが変わります

相場より高い契約扱い
独立した企業と交渉がうまくいっただけ問題なし
オーナー関連企業と分母の水増しの可能性市場価値に引き直される

リヴァプールの£12.4mの含み

逆に、リヴァプールの袖は適正より£12.4m安い状態です。

これは損というより、将来の伸びしろと読めます。契約が満了して結び直すとき、この差が埋まれば、分母が年£12m増える計算になります。

前に書いたとおり、SCRは比率の規制です。分母が£12m増えれば、使える額は£10.2m(£12m × 85%)増えます。

前にアーセナルの記事で書いた「毎年続く収益のほうが、一度きりの資本注入より強い」という話は、ここにも当てはまります。

見るときのポイント

  • スポンサー契約の実額と適正価格は一致しない
  • ズレる理由は、契約時期・交渉力・買い手の事情
  • オーナー関連企業との契約だけは、適正価格に引き直される(APTルール)
  • 適正より安い契約は、契約更新時の伸びしろとして読める

「年£◯mの大型契約」という見出しを見たら、その枠の適正価格はいくらかを考えてみてください。高いのか安いのかは、金額の大きさだけでは分かりません。


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出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。適正価格は第三者による算定値であり、算定者によって異なります。投資に関する助言を目的とするものではありません。

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