スポンサーの適正価格とは — 第三者評価・契約報道額・APT審査の違い

〜外部評価はリーグの認定額ではない〜No.59
サッカー財務スポンサールール

スポンサー枠の第三者評価と契約額には差が生じます。ただし、外部の評価額はリーグがAPT審査で認定した公正価値と同じではありません。

本文の評価と報道額を比較します。その差額を次回更新で必ず得られる増収や、確定した補強余力として扱わないことが重要です。

1. 4クラブの袖スポンサー

クラブスポンサー報道された契約額第三者評価額差
リヴァプールExpedia£9m£21.4m適正より£12.4m安い
マンチェスター・UDXC Technology£20m£11m適正より£9m高い
アーセナルVisit Rwanda£10m£14.9m適正より£4.9m安い
チェルシーLive Nation非公表£13m—

出典: The Sponsor

9リヴァプールの実額21.4リヴァプールの適正20マンUの実額11マンUの適正
袖スポンサーの報道された契約額額と第三者評価額(£m)

同じリーグの、同じ袖という枠です。それでも実額と第三者評価額の関係が、クラブによって正反対になっています。

2. なぜズレるのか

理由は、いくつも考えられます。

1. 契約した時期が違う

スポンサー契約は複数年です。数年前に結んだ契約は、当時の相場で値段が決まっています。 その後クラブが強くなれば、第三者評価額だけが先に上がります。

リヴァプールは2024/25に収益£703mでリーグ最高、2025/26もCLに出続けています。契約を結んだ時点より、いまのほうが価値が高いという説明は成り立ちます。

2. 交渉力の差

長期契約と引き換えに単価を下げる、複数の枠をまとめて売る、といった条件がつくことがあります。枠単体の値段は、契約全体の一部でしかありません。

3. 買い手の事情

その企業がどれだけその枠を欲しがったか。競合が何社いたか。ここで値段は動きます。

3. 第三者評価額が制度に組み込まれている

スポンサーの適正価格を考えるとき、本文の第三者評価額と、APT審査で用いる公正な市場価値は別物です。スポンサーの適正価格は、評価方法と契約条件を確認して読みます。

くり返しになりますが、プレミアリーグにはAPTルール(関連当事者取引ルール)があります。

オーナーと関係の深い企業との取引は、公正な市場価値に引き直して評価する。

つまり、オーナー筋の企業が相場より高い金額でスポンサー契約を結んでも、SCRの分母に算入できるのは市場価値の分だけです。

2026/27から始まる式を確認します。

スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%

ここでの85%は国内SCRのグリーン基準です。分母は規則上の調整後の値で、国内のシーズン中の判定では事前合意した収益等を使います。欧州大会の対象クラブは、定義・期間の異なるUEFAの70%も別に確認します。費用枠の増加は、同額の移籍金を使えるという意味ではありません。公式説明。

分母を水増しできないようにする仕組みが、この「公正な市場価値」です。

4. 第三者評価だけでは適否を判定できない

外部評価を上回る契約があっても、それだけで不適切とは言えません。反対に、独立したスポンサーとの契約だから、すべての財務ルール上の問題がないと保証することもできません。

APT審査では、取引相手との関係や規則上の評価方法を確認します。この記事にある第三者の評価額を、その審査で認定された上限として使わないことが重要です。APTルールの解説。

5. リヴァプールの£12.4mの含み

逆に、リヴァプールの袖は適正より£12.4m安い状態です。

これは損というより、将来の契約条件を考える参考にはなりますが、確定した伸びしろではありません。契約が満了して結び直すとき、この差が埋まれば、分母が年£12m増える計算になります。

くり返しになりますが、SCRは比率の規制です。分母が£12m増えれば、国内85%相当の年間費用枠は£10.2m(£12m × 85%)増える計算です。ほかの条件が同じで、その増収を対象期間に算入できる場合に限ります。

前にアーセナルの記事で書いた「毎年続く収益のほうが、一度きりの資本注入より強い」という話は、ここにも当てはまります。

6. 読むときに確認したいこと

  • スポンサー契約の実額と第三者評価額は一致しない
  • ズレる理由は、契約時期・交渉力・買い手の事情
  • APT審査の公正価値と、この記事の第三者評価額は別
  • 適正より安い契約は、更新条件を考える参考にはなるが、増収は保証されない

「年£◯mの大型契約」という見出しを見たら、その枠の第三者評価額はいくらかを考えてみてください。高いのか安いのかは、金額の大きさだけでは分かりません。


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出典

本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。第三者評価額は第三者による算定値であり、算定者によって異なります。投資に関する助言を目的とするものではありません。

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