クラブワールドカップの賞金$114.6mは得だったのか — チェルシーを1年後に検算
〜一度きりの賞金と、消えた毎年の収入〜$114.6mチェルシーは2025年のクラブワールドカップで優勝し$114.6mを得ました。その1年後、リーグ10位で欧州大会の出場権を失っています。一度きりの賞金と、毎年続く収入。どちらが大きかったのかを数字で追いました。
2025年7月、チェルシーはクラブワールドカップで優勝しました。獲得額は$114.6m。1試合の賞金としてはサッカー史上でも最大級です。
それから1年。2025/26シーズンのチェルシーはリーグ10位で終わり、2026/27の欧州大会に出られません。
あの賞金は、結局どちらだったのか。 検算します。
得たもの
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 出場料 | $28.7m |
| 成績による賞金 | $85.625m |
| 合計 | $114.6m |
出典: Sports Illustrated、BBC Sport
決勝に勝った分だけで$40mです。一度きりの収入としては破格でした。
前に書いたとおり、チェルシーの2024/25の税引前損失は£262.4mでリーグ史上最大。この賞金は、その穴を埋める役に立ったはずです。
その後に起きたこと
2025/26シーズンの最終順位を見ます。
| 順位 | クラブ | 勝点 |
|---|---|---|
| 1 | アーセナル | 85 |
| 2 | マンチェスター・シティ | 78 |
| 3 | マンチェスター・ユナイテッド | 71 |
| 4 | アストン・ヴィラ | 65 |
| 5 | リヴァプール | 60 |
| … | ||
| 10 | チェルシー | 52 |
出典: NBC Sports
10位。 2026/27のチャンピオンズリーグに出るのはアーセナル、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、アストン・ヴィラ、リヴァプールの5クラブです。
チェルシーはFAカップ決勝にも進みましたが、マンチェスター・シティに敗れました。ヨーロッパリーグの枠もここで消えています。
2026/27の欧州大会は、完全にありません。
失ったもの その1:順位による分配
前に書いたとおり、プレミアリーグのメリットペイメントは1順位ごとに国内£1.6m、海外£1.04mです。
4位と10位では6順位の差があります。
(£1.6m + £1.04m)× 6順位 = £15.84m(本サイトによる計算値)
これが1年分です。
さらに前に書いたとおり、ファシリティフィーは生中継された試合数で決まります。順位が下がれば中継の回数も減ります。ここも目減りします。
失ったもの その2:欧州大会の収入
こちらのほうが大きい。
前に書いたとおり、チャンピオンズリーグはリーグフェーズに出るだけで€18.62m、1勝ごとに€2.1m、引き分けで€700,000が入ります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 出場するだけ | €18.62m |
| 1勝ごと | €2.1m |
| 引き分けごと | €700,000 |
出場すらできなければ、この全部がゼロになります。
そして重要なのは、これが1年で終わらない可能性があることです。欧州大会に出られないシーズンは、
- 選手を集めにくくなる
- スポンサーの交渉力が落ちる
- 翌年も順位が上がらなければ、また出られない
前に書いた降格クラブの循環と、構造は同じです。分母が縮むと、翌年の分母がさらに縮みます。
そして、疲労
金額に直しにくい部分ですが、無視できません。
クラブワールドカップは2025年6月15日から7月13日まで行われました。決勝まで勝ち上がったチェルシーは、8月初旬に始まる国内シーズンまでの休みがほとんどありませんでした。
報じられているところでは、コール・パーマーは大会後の出場が9試合にとどまり、ジョアン・ペドロはシーズンの多くを痛みを抱えたまま戦い、調子を大きく落としました(ESPN)。
深く勝ち上がったクラブほど、翌シーズンの成績が期待を下回ったとも報じられています。
並べてみる
| 内容 | 性質 | |
|---|---|---|
| 得た | クラブW杯の賞金 $114.6m | 一度きり |
| 失った(1年目) | メリットペイメント £15.84m(計算値) | 毎年 |
| 失った(1年目) | ファシリティフィーの減少 | 毎年 |
| 失った(1年目) | 欧州大会の収入(最低でも€18.62m) | 毎年 |
| 失った(見えない分) | 主力の稼働率 | — |
この対比が本質です
前にアーセナルの記事で書いたことが、ここでも当てはまります。
一度きりの大金より、毎年続く収入のほうが強い。
$114.6mは大きい。しかしそれは1回だけです。一方、欧州大会への出場権は毎年更新される収入源であり、選手を集める力でもあります。
2026/27から始まるSCRの式でも同じです。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
賞金はその年の分母を押し上げます。しかし翌年の分母には残りません。欧州大会の収入は、出続けるかぎり毎年分母に入ります。
前に書いた概算では、チェルシーのSCR比率は約116%。レッド・スレッショルドの115%を超える水準でした。その分母から、欧州大会の分が丸ごと抜けます。
それでも、決めつけられないこと
正直に書いておきます。
「クラブW杯に出たから10位になった」とは言い切れません。
- 疲労がどれだけ順位に影響したかは、数字で切り分けられない
- チェルシーは2025年夏に大量補強を行い、その戦力が機能したかという別の問題がある
- そもそも大会は断る選択肢が事実上なかった
そして忘れてはならないのは、チェルシーは2026年夏に£348mを使い、20クラブで最多だったことです。賞金は使われました。それが翌年以降に効くなら、話はまた変わります。
見るときのポイント
- 大会の賞金は一度きり。順位と欧州出場は毎年続く
- 1順位の差は約£2.64m(国内+海外のメリットペイメント)
- 欧州大会に出られないと、最低でも€18.62mが消える
- 分母が縮むと、翌年の分母がさらに縮む
$114.6mという数字だけを見れば、大成功でした。1年分の帳簿だけを見れば、です。
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出典
- Sports Illustrated「2025 Club World Cup Prize Money: Full List of Earnings for Every Team」 https://www.si.com/soccer/2025-club-world-cup-prize-money-full-list-earnings-every-team
- BBC Sport「Club World Cup prize money announced」 https://feeds.bbci.co.uk/sport/football/articles/c5y41gzy7k3o
- NBC Sports「Premier League 2025-26 final table」 https://www.nbcsports.com/premier-league-table-2025-26-season-standings
- ESPN「Which elite clubs are struggling with World Cup burnout?」 https://www.espn.com/soccer/story/_/id/49536934/world-cup-burnout-premier-league-laliga-liverpool-arsenal-barcelona-bayern-munich-man-united
- NBC Sports「Premier League prize money — How much is each table position worth?」 https://www.nbcsports.com/soccer/news/premier-league-prize-money-how-much-is-each-table-position-worth
- Premier League「New Premier League financial system explained」 https://www.premierleague.com/en/news/4467022/new-premier-league-financial-system-explained
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。賞金は$、欧州大会の賞金は€、リーグの分配は£と、資料の通貨をそのまま用いています。メリットペイメントの差は本サイトによる計算値です。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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