ユニフォームの売上は、クラブにいくら入るのか — £100のうち手元に残るのは£10前後
〜売れても入るのは1割〜£100レプリカユニフォームの売上は、1着あたりクラブにいくら入るのか。答えは定価の1割前後です。メーカーが6割、小売が2割、税が1割。「大量に売れたから儲かった」という話が、実はほとんど成り立たない理由を数字で説明します。
「あの選手が来てから、ユニフォームが飛ぶように売れている」
移籍のたびに見る話です。そして、ほとんどの場合そこまで儲かっていません。
理由は単純で、売れた代金のうちクラブに入るのは1割前後だからです。
£100のユニフォームの行き先
6割はメーカーが取る
レプリカ1着の代金がどう分かれるか、報じられている内訳はこうです。
| 誰が | 取り分の目安 |
|---|---|
| メーカー(Nike、adidasなど) | 約60% |
| 小売(店・EC) | 約20% |
| 税金(VATなど) | 約10% |
| クラブ | 約10% |
£100のユニフォームが売れて、クラブの手元に残るのは£10前後。ここが出発点です。
なぜクラブの取り分がこんなに小さいのか
作っているのも売っているのもクラブではないからです。
生地を調達し、工場で作り、世界中の店に配る。この一式をメーカーが引き受けています。クラブが出しているのはエンブレムと選手の名前、つまりブランドだけです。
だからクラブが受け取るのはロイヤリティ(使用料)という形になります。
ロイヤリティの相場
だいたい5〜10%、大きいクラブで最大20%
報じられている水準を並べます。
| クラブ・団体 | ロイヤリティ |
|---|---|
| 一般的な水準 | 5〜10% |
| 平均的とされる数字 | 約7.5% |
| ドイツサッカー連盟 | 6.1% |
| ユヴェントス | 約6% |
| リヴァプール | 20% |
出典: The Fact Ball、Footy Headlines
リヴァプールの20%は例外的に高い水準です。交渉力の差がそのまま出ています。
「たくさん売れてから」しか入らない契約もある
もうひとつ、見落とされやすい条件があります。
大型契約では、一定の販売数を超えてから初めてロイヤリティが発生する形になっていることがあります。それまでの分は、前払い金に含まれている扱いです。
つまり売れ始めてすぐクラブにお金が入るとは限りません。
本体は前払いの固定額
契約金のほうが桁が大きい
ここまでの話でいくと「ユニフォームはクラブの収入源として小さい」と思えます。実際そのとおりで、クラブがキット契約から得る本体は、ロイヤリティではなく前払いの固定額です。
| クラブ | メーカー | 年額 |
|---|---|---|
| マンチェスター・ユナイテッド | adidas | 年£90m |
| アーセナル | adidas | 年約£75m |
| リヴァプール | adidas | 年£60m超 |
| チェルシー | Nike | 年約£60m |
| マンチェスター・シティ | PUMA | 年£100m |
各契約の詳しい条件はキットサプライヤー契約はいくらかにまとめてあります。
年£90mの固定収入に対して、1着£10のロイヤリティ。 どちらが本体かは明らかです。
だから「爆売れ」の効果は限定的
仮にある選手の加入で、レプリカが10万着余分に売れたとします。1着£100、クラブの取り分10%なら——
£100 × 100,000 × 10% = £1m
10万着でも£1mです。移籍金£117mのモーガン・ロジャーズを、ユニフォームの売上で回収しようとすると、1,170万着必要になります。
「ユニフォームの売上で移籍金の元を取る」という話が成り立たないのは、この桁の差のためです。
SCRから見ると
キット契約の収入は、商業収入としてSCRの分母に入ります。
そして前払いの固定額は契約期間中ずっと入り続けるので、成績が落ちても消えません。SCRを改善するために効くこと ベスト5で商業収入を2位に置いたのは、この安定性のためでした。
一方でロイヤリティは売れ行き次第なので、分母としては読みにくい部分です。クラブが固定額を重視するのは、そこにも理由があります。
覚えておくと効くこと
- レプリカ1着の代金は、メーカー6割・小売2割・税1割・クラブ1割が目安
- クラブのロイヤリティは5〜10%が相場。平均7.5%程度、リヴァプールは20%と高い
- 大型契約では、一定数を超えるまでロイヤリティが発生しないこともある
- キット契約の本体は前払いの固定額。マンチェスター・シティは年£100m
- 10万着余分に売れても、クラブに入るのは£1m程度。移籍金の回収にはならない
「ユニフォームが売れている」というニュースを見たら、売れた枚数ではなく、そのクラブのロイヤリティが何%かを考えてみてください。だいたい、思っているより小さい話です。
なお、海外のユニフォームは同じ表記でもブランドごとにサイズが違います。買う前に確かめる道具をこちらに置いてあります。
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出典
- Premier League「New Premier League financial system explained」(商業収入がSCRの分母に入ること) https://www.premierleague.com/en/news/4467022/new-premier-league-financial-system-explained
- The Fact Ball「How much do football clubs make with shirt sales?」(ロイヤリティ5〜10%、平均7.5%、リヴァプール20%) https://thefactball.substack.com/p/shirt-sales
- Footy Headlines「Full Breakdown: The Price of a Football Shirt」(メーカー6割・小売2割・税1割・クラブ1割の内訳) https://www.footyheadlines.com/2023/07/full-breakdown-price-of-football-shirt.html
- Daniel Geey「The Shirt Sales Myth」(一定数を超えてからロイヤリティが発生する仕組み) https://www.danielgeey.com/done-deal-blog/the-shirt-sales-myth
- GiveMeSport「Premier League Kit Manufacturers 2026/27」(各クラブのキット契約の年額) https://www.givemesport.com/premier-league-kit-manufacturers-2026-27/
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・メーカーとも関係はありません。ロイヤリティの比率と1着あたりの内訳は、いずれも報道にもとづく目安であり、契約ごとに異なります。実際の条件はクラブもメーカーも公表していません。10万着の試算は筆者による概算です。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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