プレミアリーグの移籍支出が£3.48bnで記録更新 — 他の4大リーグ合計を上回った
〜4大リーグ合計より多い〜£3.48bn2026年夏の移籍市場が閉じました。プレミアリーグの総支出は£3.48bnで、前記録の£3.19bnを更新。他の4大リーグを全部足しても£2.45bnで、プレミア1つに届きません。クラブ別の支出と純支出、そしてチャンピオンシップが£172.1mの黒字だった話まで。
9月1日23時(英国時間)、夏の移籍市場が閉じました。
プレミアリーグの総支出は£3.48bn。 前の記録である2025年夏の£3.19bnを、£290m上回りました。
以前£2.14bnの時点で途中集計を書きましたが、そこから£1.34bn積み増したことになります。最後の1週間で市場の4割近くが動いた計算です。
最終的な数字
総支出・売却・純支出
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総支出 | £3.48bn |
| 選手の売却 | £2.17bn |
| 純支出 | £1.30bn |
| 前の記録(2025年夏) | £3.19bn |
出典: Sky Sports「Summer transfer spending」
£3.48bn出ていって、£2.17bn戻ってきた。 差し引き£1.30bnが実際にリーグから出た額です。
「£3.48bn使った」という見出しだけを見ると、その全額が消えたように読めます。実際には6割以上が、選手を売ることで回収されています。
数字が資料によって違う理由
ひとつ注意点があります。同じ「総支出」でも、集計元によって額が違います。
デロイトは2025年夏の総支出を£3.0bnとしていますが、Sky Sportsは同じ夏を£3.19bnとしています。£190mの差です。
どこまでを「その窓の取引」と数えるか、達成条件つきの金額をどう扱うかで変わります。どちらかが間違っているわけではありません。 比べるときは、同じ集計元どうしで比べる必要があります。
この記事はSky Sportsの集計で統一しています。
クラブ別に見る
支出がいちばん多かったのは
| 順位 | クラブ | 総支出 |
|---|---|---|
| 1 | マンチェスター・シティ | £440.3m |
| 2 | チェルシー | £342.4m |
| 3 | トッテナム | £334m |
| 4 | ニューカッスル | £275.2m |
シティはエリオット・アンダーソンに£116m、そしてエンソ・フェルナンデスに£125mを投じました。後者はチェルシーからの獲得で、英国史上最高額に並ぶ額です。
なお英国史上最高額の記録そのものは、この夏に3回動いています。£116m(アンダーソン)→ £117m(ロジャーズ)→ £125m(フェルナンデス)。
純支出で見ると顔ぶれが変わる
支出の多さと、実際に身銭を切った額は別です。
| 順位 | クラブ | 純支出 |
|---|---|---|
| 1 | リヴァプール | £219.4m |
| 2 | イプスウィッチ・タウン | £190.7m |
| 3 | トッテナム | £176m |
| 4 | アーセナル | £136.6m |
総支出1位のシティも2位のチェルシーも、純支出の上位4クラブに入っていません。 どちらも売って戻した額が大きいためです。チェルシーはロジャーズを£117mで買う一方、フェルナンデスを£125mで売っています。
そして目を引くのが2位のイプスウィッチです。
昇格クラブが純支出2位という異常
イプスウィッチは昨季チャンピオンシップから上がってきたクラブです。その純支出が£190.7m、リーグ全体の2位。
このクラブの直近の収益は£155.4mでした(財務データベース)。1年の収入を超える額を、純額で使っていることになります。
オーナーは米国の年金基金系ファンド、Gamechanger 20 Ltdです(→オーナー一覧)。
念のため補足すると、これがただちにルール違反というわけではありません。移籍金は支払った年に全額が費用になるのではなく、契約年数で割って計上されるからです(→「£100mで獲得」の本当の意味)。
ただし降格すれば収入は激減します。分母が縮んだ状態で、分子だけが数年残るという形になります。
欧州の中で見ると
4大リーグを全部足しても届かない
ここがいちばん分かりやすい数字です。
| リーグ | 総支出 | プレミアは何倍か |
|---|---|---|
| プレミアリーグ | £3,480m | — |
| セリエA | £843.6m | 4.1倍 |
| ラ・リーガ | £603.5m | 5.8倍 |
| ブンデスリーガ | £507.6m | 6.9倍 |
| リーグ・アン | £490.6m | 7.1倍 |
他の4大リーグを全部足すと£2,445m。 プレミアリーグ1つの£3,480mに、まだ£1,035m足りません。
以前欧州5大リーグの移籍支出を比べるで扱った差が、さらに開いた形です。
理由は放映権です。プレミアリーグは国内外の放映権料を比較的均等に分配しており、最下位のクラブでも£100m超が入ります。下位クラブの購買力が、他リーグの中位クラブより高いという構造になっています。
チャンピオンシップは£172.1mの黒字だった
見落とされやすい数字を最後に置きます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| チャンピオンシップの総支出 | £289.3m(前記録£204.2m) |
| チャンピオンシップの売却 | £461.4m |
| 差し引き | £172.1mの黒字 |
2部リーグ全体で、£172.1m稼いでいます。
前にパラシュートペイメントやプレーオフ決勝の価値で書いたとおり、チャンピオンシップは慢性的に赤字のリーグです。そこへ移籍市場から£172.1mが流れ込みました。
モーガン・ロジャーズがミドルスブラから£8mでヴィラへ移り、2年半後に£117mでチェルシーへ動いたように、育てて売る側にお金が回る構造です。連帯貢献金も同じ方向に効きます。
財務ルールから見ると
2026/27から始まったSCRは、こういう割り算でした。
スカッドコスト ÷ 調整後収益 ≦ 85%
この夏の数字を当てはめると、方向がはっきりします。
- 総支出£3.48bn … 償却費として、これから数年分子に乗っていく
- 売却£2.17bn … ただしこのうち利益になった分だけが分母に乗る
ここが要注意です。売値と利益は違います。 チェルシーは2025年夏に£300m規模を回収しましたが、決算に計上された利益は£32mでした。買ってきた選手を売っても、帳簿に残っていた額を引いた残りしか利益になりません。
だから£2.17bn売れたからといって、£2.17bnが分母に乗るわけではありません。詳しくはSCRを改善するために効くこと ベスト5に書きました。
分子は確実に増え、分母は思ったほど増えない。 記録的な夏のあとには、この形が残ります。
関連記事
出典
- Sky Sports「Summer transfer spending: Premier League, EFL, WSL, Scottish Premiership, LaLiga, Ligue 1, Serie A and Bundesliga breakdowns」(総支出£3.48bn、純支出£1.30bn、クラブ別、他リーグ、チャンピオンシップ) https://www.skysports.com/football/news/11095/13574593/summer-transfer-spending-premier-league-efl-wsl-scottish-premiership-laliga-ligue-1-serie-a-and-bundesliga-breakdowns
- CBS Sports「Enzo Fernandez to join Manchester City from Chelsea in record-tying move」(£125m) https://www.cbssports.com/soccer/news/enzo-fernandez-manchester-city-chelsea-in-record-tying-125-million-move/
- Deloitte「Premier League spending record eclipsed」(2025年夏の総支出£3.0bn。集計方法の違いの比較用) https://www.deloitte.com/uk/en/about/press-room/deloitte-premier-league-spending-record-eclipsed.html
- Premier League「New Premier League financial system explained」(SCRの分子・分母の定義) https://www.premierleague.com/en/news/4467022/new-premier-league-financial-system-explained
本記事は個人が公開情報をもとに作成した非公式の解説であり、いずれのクラブ・団体とも関係はありません。移籍金の集計は集計元によって差が出ます。本記事はSky Sportsの集計で統一しており、デロイトなど他機関の数値とは一致しません。倍率の計算は筆者によるものです。イプスウィッチについての記述は財務ルール上の違反を指摘するものではありません。投資に関する助言を目的とするものではありません。
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